第22話 40年目の真実

既に、八重子と浩二は死んでいた。


千春の告白に、動揺を隠せない男。


「この先、僕の未来はどうなるので


しょうか?」


二人の死に、狼狽えながら広隆が尋ねる。


「叔父さんの未来は此処に・・・


小説の結末を読んで」


千春から言われるがまま、『ある男の物語』


のラストを読んでみる。


(男が冷静沈着に思考した結果、


今から20年後、欧州原子核研究機構によって


人類初のタイムマシンが開発される噂を


訊いていたのだ。


スイス・ジュネーブにある


ヨーロッパ素粒子物理学研究所


CERN【セルン】が開発したタイムマシン


初号機に乗り込む事ができ、無事


1978年の時代に帰還出来た。


すぐ様男は、自らの未来体験を小説として


出版したところ、100万部を越える


大ベストセラーとなったのだ )


広隆が静かに本を閉じる。


しかし、彼には嘲笑すら浮かんでいる。


「だけど、映画やドラマじゃあるまいし、


20年後にタイムマシンが開発されるなんて。


それよりも、早く1978年に帰りたいよ〜


わけの分からない21世紀に、僕は


どうやって生きてけばいいんだ!


タイムマシンとかタイムスリップとか、


挙句に、素粒子物理学研究・・・


わけの分からない事ばかり・・・


もういい加減頭がおかしくなりそうだ!


もうイヤだ・・・


僕も八重子のところに往く!!」


広隆が両手で頭部を挟み込みながら、


前屈みにうっぷした。


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