第20話 40年目の真実
彼女が含み笑いを浮かべながら、
僕を観ている。
何もかも、掌握しているみたい。
「これを見て下さらない」
千春が一冊の本を取り出し、卓上に置く。
それは、八重子の本だった。
「これは?」
「母のデビュー作です」
目の前に差し出された本を、
躊躇無く開いてみる。
短編小説だろうか、幾つか集められた
オムニバス形式になっている様だ。
「その中に、『ある男の物語』という
題名の小説が貴方自身なのです」
「えっ!」
思わず、節句する広隆。
すかさず八重子作の物語に目を通したところ、
そこにはまさに現在の自分が描かれてある。
「これはどういう事なんだ!
この小説にも2017年が・・・」
驚くのは、自分自身の一生が小説に・・・
その他、色々な出来事が予言されている。
3月23日のワールドカップアジア最終予選
日本対UAE戦に於いて日本は敗戦し、
2018年開催のロシアワールドカップには、
出場出来ない。
3月28日のタイ戦に於いても、敗戦と同時に
監督が更迭される。
WBC(ワールドベースボール
クラシック)の優勝チームは
オランダです。
3月から5月の間に、東北新幹線脱線転覆事故
が発生。
プロ野球の日本シリーズ優勝チームは、
阪神タイガース。
とすれば、1985年以来32年振りだ。
「阪神タイガース! 本当ですか?」
彼女がコクリと頷く、広隆も大の阪神ファン
なので、思い切り口角が上がる。
「春は日本中がお通夜だったけど、
秋の大阪は大騒ぎに」
透視能力・・・
八重子にこんな力があったとは。
遠くを見つめる広隆、これらは全て八重子の
小説に予言されていたものだ。
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