第19話 40年目の真実

彼女が配達員から受け取った、


丸い形の箱を卓上に置いた。


紙箱は三段重ねになっていて、平べったく


幅は40センチはあろうか。


「召し上がって」


千春の言葉にヨダレが出そうだ、


それというのも香ばしい香りが鼻をつく。


紙製の蓋を開けると、コンガリ焼きたての


ピザだ。


オニオンの匂いが強烈なのに、チーズが


タップリとかけてある為か、とても


美味しそうだ。


千春からフォークを借りて、


ピザにカブりつく。


ピザを噛みちぎろうとしたところ、


どこまでも伸びてしまうチーズ。


少なからず広隆にも衝撃が走る、


こんなピザは初めてだ。


新食感に感嘆する広隆、今度は彼女が


ワインボトルを持って来た。


その事にも全く気づかず、夢中で


ピザを頬張る。


ワイングラスに注がれた洋酒が置かれた途端、


グラスを鷲掴みにして、急いで胃袋に


流し込んだ。


余程お腹が空いていたのか、ひたすら


ムシャムシャと食べている。


3つの箱のうち、男は二箱を食べ切った。


やっと満腹になったのか、後ろに


仰け反りながら、ゲップを漏らす。


だいぶ落ち着きを取り戻した男は、


尚もワインを飲み続ける。


「ごちそうさなでした、お陰で


生き延びました」


たらふく呑んだせいか、既に顔が真っ赤に。


「失礼ですが、貴方のご職業は?」


彼の問いに、微笑みながら。


「貴方と一緒ですわ、作家業です」


「どうして、僕が作家志望とご存知で?」


頷きながら、彼女もワインをひとくち


口に含む。


「貴方の事は全て、母の小説に描いて


ありますわ」


「それは、八重子さんの小説ですか?」


あたりまえの様に頷く千春、しかし、


どうして八重子が僕の未来を?


男が眉間に皺を寄せたと同時に、


視線を逸らす。


「1974年に開催されたモナリザ展を


鑑賞した頃から、他人の未来が見えると


言ってました」


本当だろうか、ダビンチのモナリザ・・・


やはり、何かがあるのかも知れない。


八重子にも、奇妙な事象が起きていた。


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