第17話 40年目の真実

驚きと共に、広隆には千春の真意が


理解出来ない。


何もかも混乱の渦に、巻き込まれている。


こうなったのも、想定外としか・・・


彼はジッと、彼女の返事を待つのみ。


「もしも、他人の未来が全て把握出来たら


赤松さんならどうしますか?」


「えっ!何故そんなことを?」


彼女が、何を言いたいのか分からない。


「私の自宅に、来てもらえませんか?


全部話しますわ。


それはそうと、食事まだなんでしょ」


言われてみれば、24時間何も食べてない。


「行っても良いですか?」


彼の問いに何の躊躇もなく頷く彼女、


現状打破の為には行くしかない、


自宅に行く決心をする。


此処から歩いても10分程の場所だ、


たかが知れている。


前にも来た事はある場所なのだが、暫く


来ないうちに随分と変わったものだ。


それにも増して、目の前に聳える


高い塔が気になった。


迷う事なく千春に訊いてみると、東京


スカイツリーと言うらしい。


昭和53年の過去からやって来た広隆にとって


想像すら出来ない光景である。


そう考えながら歩を進めたところ、


高層マンションの前に到着した。


千春の案内で一番高い建物を指差した、


どうやらタワーマンションと言うらしい。


天にまで聳えるタワーマンション、


千春は40階に住んでいる。


55階建てマンションを目の前にして、昭和


という時代が霞んでみえた。


一階にある扉が自動で開き、広い


エントランスが目に飛び込んでくる。


「まるで、ホテルみたいだ」


ひとり彼が呟く。


エレベーター前まで来たところ、


新築であろうか床には鮮やかな


レッドカーペットが敷いてあり、全体的に


真新しさを感じさせた。


エレベーターに乗り込み上がると、


振動や揺れもなく非常に快適だ。


そして何より超高速の為か、1分以内に


40階まで登り切ったのだ。


「凄い! 昭和とは違う」


広隆にとって、感嘆たる初体験。


高速エレベーターから出て千春について行くと


一番奥にあるドアの前に立ち止まる。


おもむろに、彼女が上着のポケットから


名刺大のカードを取り出した。


そして、そのカードをドアノブに翳すと、


カチッと辺りに音が響くと同時に、


ひとりでに扉が開く。


「失礼します」


思ったよりもかなり広い部屋だ、


未来の佇まいに驚く広隆。




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