第14話 2017年

「お金、幾ら持ってんの?」


店長の男は眉間に皺を寄せながら、


憤怒の感情を露わにしている。


痩せ気味なのに身長も高く、筋肉質な


体格だ。


問われるまま広隆が財布を取り出し、


中から万札5枚を抜くとテーブルの上に。


すると、店長が驚いた様子。


「これは、ニセ札じゃないの?


なんで聖徳太子なのよ」


「昔から聖徳太子です」


店長に突っ込まれ、タジタジの広隆。


男はまだ20代後半の為、旧紙幣の存在を


知らなかったのだ。


「このニセ札、どこから手に入れたの?」


「違います! 本物です」


ため息をつくと同時に、上着のポケットから


携帯を取り出し。


「怪しい、あんた常習犯でしょ?


・・・警察に連絡する」


「そ、それだけは!」


広隆の必死の抵抗も虚しく、無視するように


目もくれず、警察に電話している。


通話が終わるやいなや、広隆に向き直り。


「来るまで、この紙に貴方の個人情報を」


言われるがまま、差し出されたボールペンを


持って記入する。


そこへ、2人の警察官が扉を開けて、


脱兎の如く入って来た。


警察官は、50代と30代の世代が違う二人組。


「懐かしいなぁ」


開口一番、ベテラン警官が卓上の紙幣を


見ながら、驚きの様子。


「こいつ、こんなニセ札持ってんの」


店長がニヤケながら差し出すと、


警官が憮然とした態度。


「いや、ニセ札じゃ無いよ本物だ」


その瞬間、店長の顔が真顔に。


自分の無知さに、思わず顔が真っ赤。


「一応、派出所に連れて行きましょう」


「店長が軽く会釈すると、今度は若い警察官が


彼の腕を鷲掴みしながら無理矢理引っ張る。


「来なさい」


部下の立場である若い警官が冷静に落ち着き、


職業柄手慣れた感じだ。


二人の屈強な男達に両脇を挟まれ、


抵抗する事無く、そそくさとパトカーに


乗り込む。


店の前で右手を横に振りながら、


にこやかに見送るフザケタ店長。




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