第13話 2017年

兎に角食品を買おうと陳列棚を散見していると


隣に女子高生がやって来て、手早く次々と


菓子パンを無造作に鷲掴み、彼女が持っていた


カバンの中に放り込んだまま何食わぬ顔で、


店内から外へ出て行った。


僅か数分の出来事、その光景を目撃した彼は


ドキッとしてしまう。


しかし、店員はいるのに全く気づかない。


むしろ、少女が出て行く時に(ありがとう


ございました)と店員の声が飛んだ。


目立つ場所に、レジはあるのだが。


お腹が空いていた為、急いでパンやオニギリを


掻き集め、レジに持っていく。


レジには20歳前後の女子店員がひとりだけ


立っており、掻き集めた物を台の上に置いて


財布の中から一万円札を出す。


するとどうしたものか、店員が万札をジッと


見たまま戸惑いを隠せない。


「何か?」


「・・・ニセ札」


「違いますよ」


「暫くお待ちください」


広隆は否定したのだが、店員は店長を呼びに


奥へ引き込んだ。


男は我慢の限界に達していた、直ぐにでも


腹を満たしたかった。


慌ててパンやオニギリを持ちながら、


店の外に飛び出した。


「お客さん!お金払って下さい」


大声で呼び止められると、店長が追いかけて


来て、広隆に飛び付いた。


「困りますよ、お客さん!」


グイッと後ろから胴体を強力な力で


締められた途端、食品を地面に落としてしまい


逃げ出す様に転がるオニギリ。


「ゴメンナサイ!許して」


「ちょっと、事務所まで・・・」


店長の体格は痩せているのだが、以外に


力は強力だった。


店長が彼の右腕を強引に引っ張り、


再び店内へと連れ込まれた。


事務所の中に入ると以外と狭く、テーブルと


パイプ椅子だけが無造作に置かれてある。


店長と広隆が対峙する様に座り、店長が


毅然とした顔で睨みつけている。


「お金は持ってるから払います」


「今更遅いよ」


広隆の言葉を、あっさりと吐き捨てた店長。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る