第12話 2017年

「用事がありますので、これで失礼します」


会釈をしながら、そのまま彼女が駅に向かって


行った。


しかし、広隆自身狼狽えるばかりで


おぼつかない。


この世が2017年、と言う事は未来世界に


来てしまったのだろうか。


「あの時、トラックと接触した瞬間」


・・・タイムスリップ・・・


八重子が64歳で死んだ、本当なのか?


そして、八重子の子供が僕の未来を


知っていたとは、どういう事なんだ。


「此処は何処なんだ、もしや


パラレルワールド」


そうだったとしても、どうすれば・・・


目の前に、ひっそりと佇む電話ボックスを


発見する。


「そうだ!取り敢えず電話を!」


急いで駆け込んだところ、衝撃を受けた。


「ダイヤルが無い!」


パネルにはボタンしか見当たらない、広隆が


必死になってダイヤルを捜しまわる。


「指を掛けて回さないと、繋がらない


ではないか」


彼は焦りに焦った、だが何処にも


見当たらない。


「そうだ!これは悪戯なんだ、きっと


誰かがダイヤルを隠したに違いない。


一体、誰が隠しやがったんだ!」


幾ら文句を垂れても見つからなければ


仕方ない、諦めた男が脱力感丸出しで


電話ボックスから出る。


どうしたんだこの世の中は、


俺以外みんな おかしい・・・


それにしても、何だあれは!


手鏡を左手に持って、それを指で突ついて


どこが面白い!


憤慨するも、まだ広隆にはそれが電話機とは


知る由もない。


八重子が死んでしまっては自宅に行く意味


が無い、何処に行く当てもなくフラフラと


歩いているとなんだか腹が空いてきた。


そう言えば、昨日から何も食べてない。


すると、目の前にラーメン屋が観えてきた。


しかし、ラーメン屋にしては変。


「コンビニエンスストア・マウンテン」


今まで、見た事の無い店舗。


「この世が2017年だとすれば、


最新鋭の店なのか」


取り敢えず好奇心に駆られた彼が、


興味津々ながらも店内に。


思ったよりも中は明るく綺麗、でも


ラーメンの香りは全くしない。


それにも増して、陳列棚に並べられた


大量の商品。


けれども、今までに見た事の無い


商品ばかり。




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