第11話 2017年

それにしてもどうしたのか、


突然世の中が変わってしまったような。


「さっきの八重子も、いつもの彼女


じゃない! とうとう


彼女との恋も終わってしまったのか」


一抹の寂しさを覚えながらも、見渡せば


高層ビルだらけに。


いつもとは違う、居心地の悪さを感じる。


そう考えていると後ろから声を掛けられ、


振り向くと先程の八重子。


「あのう、貴方は赤松広隆さんですか?


と、言うのは貴方の事は母から


聞いていましたので」


今度は、彼がキョトンとする。


彼女は母の言葉を思い出し、


急いで戻ってきたのだった。


「あなたは?」


神妙な顔つきで、恐る恐る聞き返す。


「私は、青木八重子の娘、青木千春


(あおきちはる)と言います」


「えー!八重子さんの娘?


八重子さんはまだ結婚前では・・・」


「母は一昨年、64歳で他界しました」


「何ですって!!」


驚天動地の広隆、まるで頭をハンマーによって


殴られたような衝撃を受けた。


「や、八重子さんが64歳で・・・」


呻く様に漏れ出た言葉に、女が頷く。


「そ、そんな馬鹿な・・・


彼女は僕と同じ25歳の筈だ、


この人は僕をからかってるんじゃ」


「母から貴方の事は、全部聞かされて


いたものですから、赤松さんの未来」


「僕の未来!何故分かるんですか?」


ニッコリ微笑んだ彼女が、沈黙を保ったまま


視線を逸らす。


これはいったいどう言う理由なのか、


八重子が64歳で逝去。


たじろぎながらも、必死に次の言葉を探す。


「それでは、現在は何年でしょうか?」


「今年は、2017年12月23日ですわ」


「・・・2017年?・・・」


顔面蒼白に、青ざめる広隆。


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