第10話 2017年」
広隆自身八重子の実家を知っていたので、
歩こうと考えた。
どうせ歩いても、10分足らずで到着出来る。
最初は広隆も楽観的に考えていた、だが
記憶を頼りに歩を進めているのに、
何だかおかしい。
それは、全く街並みが違うのだ。
360度見渡しても、記憶に無い風景。
「勘違いだろうか、他の場所も回ってみるか」
失念した様にそう呟きながら歩くと、
思わぬ人物が目に留まる。
反対の駅方面に向かっているのは、
青木八重子だ間違い無い。
「丁度良かった」
ホッとするも彼女はまだ気づく気配は無い、
脱兎の如く近づき声をかける。
「こんにちわ、赤松です!」
意識しながら笑顔を作り爽やかに声を
かけたのに、どうした訳か八重子が
キョトンとしている。
驚いた様に立ち止まると、ポカンとした
顔つきで広隆を見詰めている。
まるで、危害を加える不審者と思ったのか、
彼女の表情が強張る。
「貴方は誰ですか?」
「大学の同期、赤松広隆ですよ」
尚も、男の素性が理解出来ない。
「やだなぁ、忘れたんですか?」
少し戯けながら喋ると。
「人違いでは?」
彼女は真顔だ、連れない返事に
諦める広隆。
嫌われてしまったのか・・・
でも、あれ程の人気テレビ番組、
『プロポーズ大作戦』に出場しようと
約束までしたのに。
「失礼しました、人違いでした」
肩を落としながら項垂れた彼に対し、
正面を見据えた彼女が駅に向かって、
歩き始める。
後ろ姿を見送る広隆、それにしても
後ろ姿は八重子そっくりだ。
ひょっとしてドッペルゲンガー?
それは、ちょっと考え過ぎだろう。
「この手紙は嘘だったのか・・・」
ポケットから手紙を取り出すと、
いつの間にか茶色に変色していて、
手の中で消滅してしまったのだ。
「こ、これは!」
絶句する広隆。
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