第7話 1978年
(赤松さん、お久しぶりです。
突然のお手紙、申し訳ありません
お許しください。
前にも話しましたが、父の縁談話しが
かなり進んでおり、頻繁に打診を受けます。
相手様は製薬会社社長の御曹司です。
ご存知かと思われますが、父は中小企業を
経営しており、今まで順調に推移して
いましたが、この度のオイルショックの
煽りを受けて、かなり厳しい経営状態です。
そこで、富山の有名な製薬会社の御曹司と
婚約出来れば、会社の立て直しが可能と
判断しました。
いわば政略結婚なのですが、どうしても
その気になれません。
しかし、私は長女ですから父を助けなければ、
という思いに駆られます。
最近、私は変な夢を観ます。
それは、貴方が遠い所へ行ってしまう
悪夢です。
馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれませんが、
急いで私の自宅に来てください。
逢わなければ、二度と逢えない気が。
逢いたい・・・逢いたい
私の大切な人・・・
自宅には誰もいません
誰もいません・・・)
文面には、(逢いたいと誰もいません)が
白い便箋を埋め尽くしている。
突然の八重子からの手紙に戸惑いを隠せない
広隆だったが、逆に嬉しさがこみ上げ、
直ぐにでも逢いたい気持ちの方が
強かったのも事実。
何ヶ月振りだろうか、今躊躇すれば
二度と逢えないかも・・・
お互い離れていても、年に何回かの文通は
絶やす事は無かったのだ。
彼女に対しての、募る気持ちが昂ぶり。
「電話を掛けなきゃ!」
ひとり暮らしの寂しさも手伝って、
脱ぎ捨てた上着を再び羽織ると、
急いで部屋から飛び出す。
行かなくちゃ・・・行かなくちゃ。
そして
それから・・・
それから・・・
夜のとばりが下りた暗闇の交差点で、
いきなり信号待ちに。
クシャクシャになった八重子の手紙を持って、
ジッと見ている広隆。
(ガシャン!!)
その時だった、彼が衝撃音のする方を
瞬間的に振り向くと、2tトラックが
彼目掛けて突っ込んで来るではないか。
左から走ってきた乗用車が右折をする為、
交差点の真ん中に停車していたところへ
直進して来たトラックと衝突!
トラックが向きを変えて、歩道の端に
立っていた広隆に突っ込むかたちとなった。
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