第4話 1978年
1978年、ようやくオイルショックから
日本が抜け出そうとしていた頃、
広隆は出版社に通い詰めていた。
自分で書いた原稿用紙を持って、
編集者に校閲を頼んだ。
しかし、編集者は検討とだけ言い残し、
原稿は預かってくれたものの、
採用は見送られた。
帰りぎわに言われた、編集者の言葉が
記憶に残る。
「やはり、クライマックスの詰めが
甘いですね」
完璧なダメ出しを喰らった様な気分、
虚ろな瞳は虚空を見つめている。
彼が小説家を目指すキッカケとなったのは、
夏目漱石の『それから』を読んでからだ。
勿論、『吾輩は猫である』や
『こころ』も好きなのだが、
やはり、『それから』の方がヨロメキドラマ
として、読み応えがある為だ。
親友、平岡の妻三千代との逢引きを
繰り返す代助。
不倫という代助の行為に、
正直抵抗があった。
だが、それにも増して代助の複雑な心境に、
こころ惹かれる部分でもある。
思考単純な、三四郎とは大違いだ。
広隆にとって、芥川龍之介や太宰治でも無く、
文豪夏目漱石が神様なのである。
とは言いながらも、先月父の勧めで受けた
中小企業の面接試験結果、
不採用通知が届いていた。
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