第2話 1978年

「イタッ!」


全員で押しくらまんじゅうをしている


様なもので、あちこちから足を踏まれた人間の


呻き声が漏れ聞こえてくる。


すったもんだのあげく、いよいよ目の前に


世界の恋人モナリザが。


思ったよりも美術絵画としてはそんなに


大きくはない、誰でも片手で持てる大きさだ。


3重構造の防弾ガラスと7重の壁によって


頑丈に護られている。


運よく目の前に名画を目撃、まず眼に付くのは


絵の具のひび割れ。


細かい縦線が、上下に何列も走っている。


やはり、500年前であれば仕方ない。


その為、ケース内部は温度20前後に


保たれていた。


その瞬間、モナリザの瞳から得体の知れない


不気味さに襲われてしまった。


それは、穏やかな絵だが、瞳の向こうは


嵐が吹きすさぶ荒野。


「モナリザが怒り狂ってる!」


つい、赤松が叫んだ。


最近、顕微鏡を使った検査で、瞳から


ダビンチのイニシャル文字が発見


されている。


昭和時代の赤松には、知る由もないが。


突然、後ろから押され転倒しそうに。


その場に、止まってしまった為だ。






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