第11話

「う、うぅ・・・・・・痛い。ッ、ファッ!?」


痛さに目が覚めた途端、目に映ったものに飛び上がった。ハク?なんで?


「クゥゥゥン」


痛みを堪えながら、周りを見渡す。木の壁に天井、そして不安げに伺う、宰相様の向こうにいるのは、金髪の・・・・・・


「ラムチェルド様・・・・・・」

「安心しろ。誰も追わない。暴動は鎮めた」


しかめっ面のまま、目も合わせない。しかし、声は安堵したような様子。すいません、と声を上げようとしたら、宰相様が泣きそうな声で近づいた。


身を起こそうとしたら全身にビリビリと痛みが走る。宰相様は私の体を抑えて、このままで、と言った。


「心配いたしました。本当に申し訳ない。このような事態となって」


ラムチェルド様が私を助けると同時に複数の人の服のみを切り裂く妙技を披露し、怒鳴り上げた、と言いつつ、頭を撫でる。申し訳なさに視線が定まらない。


「しかし、まあ、あの時間で魔術で幻覚を見せるとは」

「幻覚?」

「あれですか?」


ラムチェルド様は訳がわからぬという顔だ。私は苦笑い。短時間で龍を逃すためにしたのは、幻覚で鷹に見せかけて窓から飛び立たせること。古い魔術の応用だ。


「王子は知らないですな。初めから龍の姿が見えていたから」

「え?破られて・・・・・・」


私の方が驚いた。古い魔術の、誰にも破ることができない強力な魔術だったのに。


「違いますよ。王子以外からはちゃんと鷹の姿に見えてますから」


このお方以外に龍の姿が見えなければ、それでいい。


「悪りぃな。魔力ないから」

「違いますよ。王子」


つい言ってしまった。もう戻れない。強い口調に、ラムチェルド様は眉根を寄せた。宰相様は唇を噛む。龍は訳がわかってないのか、目をクリクリさせて私に抱きついた。


「何が、違うんだ。俺に何を隠してる。父上も、お前たちも。なんで私は忌み嫌われている?俺は何も知らない」


低い声。されど、泣きそうな。


私は龍を抱きしめて撫でた。


やがて宰相様は決意したようだ。


「貴方様、ラムチェルド様は秘密があります。魔力に関する」


「何なんだ」


「貴方様は誰よりも複雑な魔力を持ち、複数により封印状態に置かれています」


封印は、強い魔術であればあるほど、はねのける効能付きで。

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