第13話・料理と気づいた事。



歩輝の言葉に元気いっぱいに手を上げてイヌが答えた。

え。本気で言ってんの?


歩輝も有り得ないと思ったのか私を見て



「華恋もできるだろ」



と呟いた。


歩輝の目を見れば"アイツに料理をさせんな!"て書いてないが感で分かった。


私も早死はしたくないので、歩輝にだけ分かるように小さく頷いた。



「私が作るわ」



そう言ってそそくさとキッチンに向かった。



「浅雛さん料理出来るんだね」



意外そうにつぶやくネコ。


私だって料理くらい出来るわよ。


少しイラってきたが顔に出さず、冷蔵庫から材料を取り出す。



「…魔女手馴れてるね」



とイヌが呟き。



「本当だ。この家に住んでるみたいだね!」



リスが尊敬の眼差しを私に向けてきた。


やってしまった。


この家には二年前に何度も来たことがある。


道具とかも変わってなかったからつい。


…変に思われただろうな。


どうしよう。


言い訳を考えていると



「…彼女なら感で分かるんですよ。なんせ魔女ですから」



と、会長が言った。



「そっか〜!やっぱり凄いね!」



「さすが魔女!」



会長の言葉に納得するバカ達。バカで良かった。


まさか会長にフォローされるとはな。


二人を無視して淡々と料理を作り上げる。



「魔女の料理って美味しいの?」



携帯を弄っている歩輝に尋ねるイヌ。



「うめーよ」



携帯から一瞬目を離して答えた。



「へー!楽しみだな!」



尻尾を振りながら満面な笑顔を浮かべた。



「…暇ならお皿出してくれない?」



さっきから隣で観察する様に、見ていたリスとネコに声をかけた。



「うん!えっと」



「お皿はそこの棚で箸はそっち」



何処の棚を開けて良いのか迷っているリスに、棚を指さしながら言った。



「ありがとう!」



人懐っこい笑顔を私に向けた。


…この子どうしてイジメられてるのかしら。


いい子なのに。



「ど、どうしたの?」



私が無言でジッとリスを見ていたら、その視線に驚いたのか、震えながら尋ねてきた。



「…取って食べたりしないからそんなにビクビクしないでよ」



「ご、ごめんなさい!」



頭を思い切り下げるリス。


どうして謝るの?謝る場面あった?


不思議に思いながらも作業を続ける。



「男子、料理終わったからテーブルにもって行くの手伝って」



「はーい」



イヌが料理を持って行きその後ろを歩輝が気だるそうにに続いた。



「ルキくんご飯出来たよ!」



「今行きます」



読んでいた本に栞を挟んでこっちに向かう会長。



「全員揃ったし食べよ!」



「いただきます」



イヌの言葉にそれぞれ挨拶をして食べ始めた。


テーブルを囲むように男3と女3に別れて座る。


私が真ん中に座り、左がネコでその前が歩輝。


右がリスでその前がイヌ。


そして私の前には会長が座っている。


…会長と向き合って食べるって変な感じ。


誰にも気づかれない様にため息をつき、おかずに手を伸ばした。



「ん!うまい!」



「美味しい!」



私の作ったご飯を美味しそうに食べるリスとイヌ。



「…大袈裟ね」



私がそう言えば



「そんなことないよ!」



とイヌが尻尾を振りながら言った。



「…浅雛さんていつも無表情だね」



「…え」



リスのその言葉に驚いて箸を止めた。


私がいつも無表情??



「そう言えばさっき会長がお風呂入った時も無表情だったよね(モグモグ)」



ご飯を頬張りながらイヌが言った。


…そんな訳ない。


ドライヤーを投げたくらい驚いたのよ。



「…表情に出にくいだけですよ」



ご飯を食べながらフォローしてくれる会長。



「そっか!」



リスが納得した様に呟きご飯を食べ始めた。


…納得いかない。私、笑って無かったの?


自分の作ったご飯をジッと、見つめたままさっきリスの言葉を思い出す。



『浅雛さんいつも無表情だね』



…私はいつから笑わなくなったの?




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