第6話・向日葵のイヌ。



「はぁ。あと少しで図書室だ」



思ったよりも時間が押してしまった。


早く本を借りて帰ろう。


今日はゆっくり出来ないのが残念だな。


あと少しで図書室て所で前を歩く男子が、大きな荷物を持ってフラフラして歩いてるのが見えた。


嫌な予感しかしない。


私の予感は的中し男子が持っていた荷物が床に散らばった。



「わ!」



無視して進もうにも荷物が道を塞いでいるため進めない。


仕方ない手伝うか。


男子の隣まで行き腰を、落として荷物に手をかけた。



「何やってるのよ。」



「ごめん!て魔女じゃん!」



耳元でそう叫ばれた。



「耳元で叫ばないで馬鹿じゃないの?」



「あ!ごめん!」



大きな声で謝る男子。


学習能力無いわね。犬でも駄犬か。


そんなイヌを横目でチラッと見る。


…意外にイケメン。


茶色の綺麗な瞳、すっーと筋の通った鼻、オレンジ色の髪で前髪をあげている。



「…向日葵」



思ったことを口に出してしまった。



「ん?あ。この髪のこと?この色いいっしょ!」



歯を見せて私に向日葵の様な笑顔を向ける。


私に笑顔を向けるなんて…変なイヌ。



「それより荷物拾ったら?邪魔」



「あ!ごめん!急いで拾うね」



私が冷たくそう言えば、慌てて荷物を拾い始めるイヌ。



「こんなに一気に持って行くから落とすのよ。何処に持って行くの?」



「職員室だよ」



荷物をかき集めながら答えるイヌ。



「そう。じゃ早くして」



持てるだけ持って立ち上がった。



「え。手伝ってくれるの!」



「仕方ないでしょ。あんたまた落としそうだし」



「ありがとう!」



「あ。俺、天音 陽〈アマネ ハル〉!よろしく!」



さっきと同じ笑顔を私に向けて自己紹介をするイヌ。


私に自己紹介しても無駄なのに。


なぜなら私は、人の名前覚えれないもの。


そう言おうとしたけど止めた。


ここは私も自己紹介した方が良いわよね?常識として。



「私は」



私も名乗ろうとしたら知ってると言われた。


ふーん。知ってて話し掛けてきたのか。


…変なイヌ。


私はイヌを置いて職員室に向かった。



「じゃ」



「またね!手伝ってくれてありがと!」



そう言って私に笑顔を向けるイヌ。


…またね…か。


なんとなくだけどイヌとはまた会える気がした。


それがまさか3時間後だとは知らずに。



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