第5話・冷たい魔女は優しい魔女。


桃杏side。



「…冷たい人」



彼女の後ろ姿を見送り呟いた。


あ。私は、鷹栖 桃杏〈タカス モア〉。


彼女は、浅雛 華恋。別名・魔女。


彼女はこの学校では有名人。


理由は2つ。


一つ目は如月 歩輝。


学園一の不良の彼と彼女は恋人だと言うこと。


二つ目は彼女の容姿。


彼女はこの学校で一番美しい容姿を持っている。


フランスのクォーターらしい彼女はその血を濃ゆく受け継いだのか日本人離れした顔立ちを持つ。


肩に付くかつかないくらいの長さの金の糸の様な金の髪。


その髪の左側を耳にかけて編み込んでいる。


左耳には金の石が一つ付いたピアスを付けている。


全てを見透かすような青い瞳、色白な肌、綺麗な形をした鼻、ぷっくりした赤い唇。


そして高身長。


私はモデルをしてるが、身長は160cmで女子の平均より少し上。


だけど彼女は私より5cm以上高い。


そんな容姿を持っている彼女はC組。


C組はこの学校では見放された組と言われている。


これは私の勝手な感想だけど。


彼女はC組には不似合いだ。


だって彼女はあんなに美しいのにC組なんて有り得ない。


彼女がどんな人なのかは噂でしか知らないけど彼女は優しい人だと思う。


確かに彼女が纏ってる雰囲気は氷の様に冷たい。


だけど決して人を軽蔑したり、噂で人を判断したりしない人。


強くて自分の意見を持ってそれをちゃんと相手にぶつける。


そんな彼女に私は憧れていたりする。


彼女が纏う空気に当てられる度に思う。


私も彼女の様に自分の意見を言えたら。


彼女の様に1人でも立っていられたら。


それは私だけじゃなくて、他の人も思っていること。


そんな彼女だからこそ皆声をかけたいし友達になりたい。


だけど彼女が纏ってる空気が邪魔をする。


だから変な噂を立てて少しでも自分達を彼女の視界に入れようとする。


けど、彼女はそれを拒む。


彼女の視界にはいつも如月 歩輝しか映っていない。


彼女にとって彼は特別なのは知っている。


見てればわかる。


だけど彼女は少し他のものに目を向けた方がいい気がする。


余計なお世話なのはわかっているけど。



クシュン!



「制服濡れてたんだ」



階段の端に寄り、自分の体を抱きしめるように座り込む。


どうしよう。この後撮影あるのに。


これからどうするか考えていたら、後ろから声をかけられた。



「もも?」



「凛!」



振り向くとそこには幼馴染みの篁 凛〈タカムラ リン〉がタオルとジャージを持って立っていた。



「はいこれ」



タオルとジャージを私に渡して言った。



「え。使って良いの?」



「うん。届け物だから」



「届け物?」



首を傾げると凛は苦笑いを浮かべて。



「あの魔女から」



と、言った。


驚き過ぎて動きを止めていると凛がクスクス笑いだした。



「私もびっくりした」



タオルを見つめてさっきの彼女の瞳と言葉思い出す。



『勘違いしないで。ただ邪魔だったから声をかけただけ。それはあんたも変わらない。もうイジメられたくなかったら言いたい事ハッキリ言えば?もじもじしてるから狙われるのよ。私貴女みたいな子嫌いだからもう関わる事はないと思うけど気おつければ?』



突き放す様な瞳。


冷たく言い渡された言葉。


確かに冷たく思えたし聞こえた。


だけど、私に対してのアドバイスの言葉も含まれていた。


そう思うと嬉しくなってついニヤケてしまった。



「どうしたの?」



変な物を見る様な目で見てくる凛にニコッと笑いかけた。



「やっぱり優しい魔女だった!」



そう笑顔で言えば凛は不思議そうな顔をした。



「私強くなるね」



「…頑張れ」



私が言いたい事を悟った凛は、私の頭を優しく撫でた。


強くなるよ彼女のように…1人でも立てるくらい強く。


この時の私は何も知らなかった。


本当の彼女は誰よりも弱く臆病だとゆう事に。



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