第3話・いじめられっ子は人気モデル。
「ちょっとあんたモデルだからって調子乗ってんじゃないわよ!」
「…なによこの在り来りなセリフ。だっさ」
普通だったら、止めに入ったりするだろうけど、私は止めに入ったりしない。
私は優しい人間ではないから。
それに他人に興味も無い。
だからあの子がどうなろうが、知った事じゃない。
冷たいと思われても構わない。
私は自分が、冷たいって自覚している。
でも、世の中には自分が冷たいと知らない人は、五万と居る。そいつら大体『誰か』に頼ってる。
『誰か』がしてくれる。
その『誰か』になれる勇気も無いくせに。
無視して行こうと足を進めるが、声のする方に近づいて行ってる気がする。
「はぁ。…最悪」
角を曲がると階段の下で1人のリスを、取り囲む様に立っている5人の……パンダ?目の周り真っ黒じゃん。
ナニソレ。最近流行りのメイク?
それとも新種の動物??
※これからでる動物は全員人間です。
主人公は人の顔を覚えるのが苦手です。
とりあえず全員邪魔。
図書室に行くには、あそこの階段を上らないと行けないのに。
イライラしながら見ていたら、囲まれているリスが口を強く噛み締め震えてるのが見えた。
しかもびしょびしょに濡れている。
大きくて二重の瞳、ぷっくりした唇、傷一つない綺麗な長い黒髪をツインテールに結んでいる。
身長も女の子らしく160cmくらいだろう。
女の私から見ても可愛いと思う。
そんなに怖いなら声を上げれば良いのに。
まあ。そんなこと出来そうにない子だろうな。
その証拠にさっきから震えているばかりで何もしていない。
「調子乗らないで!」
「そうよ!由佳の彼氏取ってんじゃねーよ!」
「男に色気使ってんじゃないよ!」
一方的に言われて言い返したくても言い返せない状況のリス。
はぁ。終わるのを待っていたら日が暮れるわ。
「ねぇ。邪魔なんだけど。そこ退いて」
低い声で声をかけるとボスパンダと呼ばれたパンダに睨まれた。
※呼ばれていません。
そんな睨み私に通用しないわよ。
てか、パンダの分際で生意気なのよ。
むしろそれでパンダ目指してんならパンダに土下座して来いよ。
パンダに失礼だわ。
「はぁ?誰よあんた」
「こ、コイツC組の如月の女の浅雛 華恋だよ!」
一匹のパンダが私を見て顔を青くした。
歩輝とセットにされるのは嫌だな。
同レベルって思われちゃうじゃない。
あんなバカと一緒にしないでほしい。
「な、なんの用よ!」
ボスパンダがビビりながら尋ねて来た。
パンダズが怖がっているのは私ではなく歩輝だ。
歩輝はこの学校では有名な不良で、近づけばこの学校にはもう通えないと恐られている。
弁解しとくけど、歩輝はただの馬鹿で阿呆。だから、そんな権力ない。
不良なのは否定しないけど。
むしろ見た目も中身も不良だし。
噂って本当くだらない。そんな噂を信じるこいつらもくだらない。
「用なんてない。そこ退いて通れないから」
腕を組んで私よりも、身長の低いパンダズを見下ろした。
「はぁ?誰に口聞いてるかわかってる?私達はA組の上位に入る程頭がいいのよ?あんたら負組とは違うの!だから遠回りしなさいよ!」
「そ、そうよ!それが貴方にお似合いよ!あはは!」
本当にメスなのかと疑うほど、下品な笑い方をして私を馬鹿にしてきたパンダズ。
誰に口聞いてんのってむしろこっちが言いたいわ。
人間に動物が口答えすんなよ。
パンダの分際で頭が高いんだよ。
このパンダが言っている組は、この学校で言うカースト制度的なもの。
A組は優秀で将来性がある者。
B組は至って普通の頭脳、普通の行いをする者。
そしてC組は問題児、将来性がなく、見捨てられたクラス。
私と歩輝はC組だ。
だから馬鹿にされる。
私が馬鹿にされようがどうでもいい。
だけど私の大切な幼馴染みを、馬鹿にするのだけは許さない。
私が馬鹿にするのは許す。
「はぁ?"誰に口聞いてるかわかってる?"それこっちのセリフなんだけど。パンダの癖に頭が高いのよ。え。なに?二足歩行出来るから"頭良いのよ!"て思ってる?それなら生まれた時から二足歩行の私はなに?神様なわけ?え。じゃあさ、神様の言う事は絶対だよね?そこ退け。邪魔。動物園帰っすぞ」
笑顔付きで一気に言い切り、最後のセリフは圧をかけるように低い声で言った。
「ど、どうするのよ由佳」
「わ、私は関係ないわ!」
「私も!」
「ちょっと!お、覚えてなさいよ!」
次々にパンダズが逃げて行き最後にボスパンダが安いセリフを言って去っていった。
「覚えてるわけないでしょ。バカじゃないの」
動物園に行って(あ。このパンダこの前のじゃん!)とか言えねーわ。
パンダみんな同じ顔じゃん。(真顔
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