第4話悪夢は突然に 1
~白雪side~
いつも通りに目が覚めた。目覚ましは朝の6時に設定されていて、その音を合図に。
視界がぼやける。体が重い。風邪だろうか?うんしょっと布団から出て体温計で熱を測る。普通に平熱だった。一回布団に戻り、横になる。眠気はない。どうしちゃんたんだろ?
そうして30分ほど経っただろう。お母さんが心配して声をかけに来る前になんとか動き出す。少し休んだらぼやけもなくなっていた。しかし体は重いままだった。
一階に降りる。プラムとリンゴがご飯をねだりにやってくる。いつも通りに、いつも通りのことをする。そのうちお母さんが起きてきて「おはよう」と声をかけてくれる。
一緒に朝ご飯を食べて、自分の分と一色君の分のお弁当を作って、制服に着替えて、緑ちゃんと学校に向かう。
授業中。まったく集中できない。というか先生が何を言っているのかわからない。例えば全然知らない外国の言葉を聞いているようだ。また視界がぼやけてきて、黒板の板書も霞んで見える。
お昼休み。いつも通りにお弁当を持って緑ちゃんと一緒に、一色君の教室に向かう。体は重いが普通に歩けているようだ。
きっと明日には、少し休めば、元気になるはずだ。みんなに心配はかけたくない。
正直、食欲なんてなかった。でも緑ちゃんと一色君の前で食べないわけにはいかない。吐き気を抑えてなんとか全部食べた。
放課後。部活のある緑ちゃんと別れて帰路に立つ。その頃には視界はぼやけるどころか、物が歪んで、ところどころ黒い点のようなものすら見える。
なんとか家に着いた。そのままトイレに直行する。吐いてしまった。
幸いお母さんは家にいなかった。きっとお買い物に行っているのだろう。プラムとリンゴを軽くなでるとそのまま自分のお部屋へ向かう。
そして階段で私の意識は途切れた……。
~白夜side~
いつも通りに手作りの弁当を持ってきてくれた東雲先輩と宇佐美先輩。東雲先輩の顔を見た瞬間、あれ?と思った。なんと言えばいいのだろう。見た目は元気に振舞っていて、普通に弁当を食べながら会話をしている。なのになぜだろう。胸がざわつく。昨日の件ではない。強いて言えば具合いが悪いように見える。時折り宇佐美先輩の言葉を聞き返している。それほど騒がしくない教室で、それほど距離が離れているわけでもなく、宇佐美先輩の声は俺にだってしっかり聞こえるぐらいなのに……。
放課後。気になった俺は校門のところで東雲先輩を待っていた。寒さはきついが、それ以上に嫌な予感がして気が気じゃなかった。
20分だろうか。東雲先輩は昇降口から出てきた。いつもはきちっときれいに揃えられている長い髪は少し崩れ、いつもは前を向いて周りの友達に挨拶しながら帰っているあの先輩が。まるで何も見えていないようにふらふらと歩いている。何も聞こえないかのように、「じゃあね」と声をかけられても返事すらしないで歩いている。
そして俺の横をだれもいないかのように通り過ぎていった……。
そしてそれから1週間一度も東雲先輩の姿を見ることはなかった……。
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