第3話意外な登場人物
~白夜side~
ふたりで黙って歩いてきたのはフードコートだった。
お昼も過ぎ人もまばらだ。
見知った顔も周りにはない。
真面目な話をするにはちょうど良い時間と場所だった。
カウンターで東雲先輩はミルクティーを、俺はコーヒーを注文する。
会計を全部出そうと財布を出した。
「あっ。待って。自分のぶんは自分で出すからいいよ」
と断られそうになったので
「服を選んでもらったお礼をさせてください」
と言って強引に会計を済ませてしまう。
「うぅ~。私、年上なのに……。奢ってもらっちゃった……」
ふたりでそれぞれドリンクを受け取りなるべく壁に近い席を選んで座る。
「東雲先輩はどうして俺の周りをうろうろしていたんですか?」
飲み物を一口飲んだところで本題に入らせてもらう。
この答え次第で……。
真剣な表情で答えを待つ。
その思いは伝わったのか東雲先輩も真剣な表情になる。
しばし沈黙は流れる。
「一色くんのことを知りたいって思ったからだよ。いつも冷めた瞳と声で人を遠ざけて。でも私の涙を拭ってくれるほど優しくて。
いつもなにかを求めているようで諦めている。そんな一色くんのことをもっと知りたいって思ったの。」
やがて口を開き決意に満ちた瞳でそう継げる。
「それは同情ですか?」
分かりきっている質問を投げかける。
「分からない。人はこれを同情と呼ぶかもしれない。これを感傷と受け取られるかもしれない。
それでも私が思うことはひとつだけ。
もっと一色くんのことを知りたい。
近づけば近づくだけその思いは強くなった。」
いつもの柔らかな微笑みはなく硬い言葉で答える。
俺はおもむろに立ち上がり東雲先輩の後ろ。
「宇佐美先輩もですか?」
サングラスをかけた女の人にも声をかける。
「ありゃ。ばれてたか」
宇佐美先輩は言葉とは裏腹に全然驚いていない。
「えー!!緑ちゃん!いつからいたの?」
むしろ東雲先輩の方が驚いていた。
「緑ちゃん!どういうこと?」
そして怒り始めた。
「どういうって……。ふたりには悪いと思ったけど親友の初めてのデートよ。気になるじゃない。
本当はばれない予定だったんだけど……。
白夜くんにばれるとは予想外だったわ。顔、覚えられてるなんて」
サングラスを外して東雲先輩のとなりに座る。
東雲先輩はデートという言葉を聞いてフリーズしている。
なるほど。デートのつもりはなかったのか。。
もちろん俺もデートという認識ではなかったが、端から見ればデートに見えるのだと再認識。
「それで、宇佐美先輩はどうなんですか?話は聞いていたんですよね?」
真意を図りかねるため確認する。
「私は聞かないわ。だって聞いたらきっと同情しちゃうもの。
でも白雪ひとりに背負わせたくないわ。だから白夜くんがそれでもいいなら私にも聞かせて」
ふざけ半分でここにいる訳じゃないという顔をしている。
あれやこれやと悩んでいるのは俺だけで東雲先輩はとっくに覚悟を決めていたのだ。
そして宇佐美先輩も。
ならば応えなくてはならない。
これが……なのか確かめるために。
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