第2章 彼女から彼へ
第1話 女の子の作戦
~白雪side~
日曜日。
緑ちゃんと私は私の部屋で作戦会議をしていた。
昨日、一色くんのことを「もっと知りたい人」と答えた私。
そのあと
「普通に声をかけてお友達から始めてみればいいんじゃないかな?」
と言った私を残念そうにみる緑ちゃん。
「なに~その顔~?」
緑ちゃんはため息をついて明日作戦会議をしましょうと言って帰っていった。
そして今日である。緑ちゃんはなにやら複雑な顔をしている。
「どうしたの?緑ちゃん♪」
そんなに暗くなるところじゃないと思う。
「白雪に話しておかないといけないことがあるの。冗談じゃないわよ。だから心して聞いてね?」
緑ちゃんはちょっと怖い顔でそう告げる。
「本当は言いたくなかったんだけど、白雪は自覚ないのよね。白雪は自分が男子から人気あると思う?」
続けて聞いてきた緑ちゃん。まだ複雑な顔をしている。
「男の子からの人気~?そんなのないよー。だって緑ちゃんだって知ってるでしょ。私1回も告白とかされたことないもん」
言ってて悲しくなる。実は緑ちゃんはかなりモテて何回か告白されたことがあるのを私は知っている。
「そうよね。まずはそこから説明しなくちゃいけないのね……」
ボソボソと独り言の緑ちゃん。こうして改めて緑ちゃんを良く見てみると背は高いしキリッとした美人さんで素直にうらやましいと思う。
私は背も147cmしかなくてチビだし顔も全然美人じゃない。
「いい。白雪。あなた今、私は美人じゃないしチビだしとか考えてたでしょ?」
図星を突かれた。
「白雪。あのね。白雪には秘密にしようっていうのがクラスの方針だったの。まぁ、私が言い出したことなんだけど。今から言うことは嘘じゃないわよ。いい?」
ちょっと怖いくらいの迫力がある。美人さん特有の迫力ってやつかなーと考えて
「うん。わかった♪」
緑ちゃんの言うことが嘘な訳ない。そんなの当たり前だ。
「白雪はね、学園で1番人気のある女の子なのよ」
言ってることがよく分からない。でも嘘じゃないって言ってるし……。
「人気?」
「そう人気。2年生の1学期に学園の男子が好きな女子ランキング投票をしたの。それで1番が白雪、あなたなの」
頭真っ白な私。
「いい、白雪。本当にあなたが学園で1番モテているのよ」
繰り返す緑ちゃん。
「えっと……。でも私1回も告白されたことないんだよっ?」
「それはね、あまりに人気がありすぎて告白することがタブーになってるからよ。告白しようとすると男子からすごいブーイングが鳴るわけ」
緑ちゃんは畳み掛けるように1枚の紙を私に渡してきた。
そこには「紅葉園学園第92回好きな女子投票!」と大きく見出しが着いていて1位から10位まで載っている。
「ここまで理解して初めて作戦会議になるわ」
と言って一旦言葉を区切った緑ちゃん。
私も考えてみる。
……。
やっぱり実感は湧かない。でも緑ちゃんが言うからにはそうなんだろう。実物も手元にあるし……。
確かに1位東雲白雪と書いてある。
さりげなく確認すると3位宇佐美緑と書いてある。
「緑ちゃん、3位だって!すごいね♪」
緑ちゃんぐらい美人でスタイルも良かったら1位でも良いと思うのに。見る目ないなぁ男子。
「だから1位は白雪なんだって……」
げっそりと呟く緑ちゃん。
「ちなみにこれの男子バージョンってないの?」
興味本位で聞いてみる。
「あるわよ。今手元にないけど。1位は覚えてるわ」
やっぱりそうきたかという顔の緑ちゃん。
「じゃあ1位は誰だったの?」
「白夜くんよ」
緑ちゃんはさらっと答える。
「えっー。そんなに人気あるんだ……」
ちょっと胸がもやもやする。
それは今は置いておく。
「うん。分かったよ。とりあえず、一色くんに迂闊に声をかけたら一色くんが困っちゃうってことだね」
なんとか現状と緑ちゃんが言いたかったことが分かった。
「ここまで長かった……」
心なしか緑ちゃんがやつれてる……。
「でもなんで私に秘密だったの?」
緑ちゃんの動きがピタッと止まった。
しばし刻が流れて
「だって……白雪が男子にそんな目で見られてるって知られたくなかったんだもん」
口を尖らせて恥ずかしそうに言う緑ちゃん。こういう緑ちゃんも可愛い。
緑ちゃんはこほんと咳払いをして話を切り替える。
「これから白雪が取れる選択肢は4つ。
1 白夜くんの周りをお構い無しに話しかける
2 周りを気にしてさりげなくメールアドレスを入手してやり取りする
3 諦める
4 いきなり告白する
さあ、どれにする?」
「いやいやいきなり諦めるとか無いよ!」
慌てて否定する。
緑ちゃんはニヤニヤしながら
「告白は否定しないんだね~」
と言ってきた。
「こっ告白するもないよ!」
きっと私の顔は真っ赤だ。
「じゃあどうする?白雪」
緑ちゃんは急に真面目な顔になった。
そうして私が出した答えは……。
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