番外編 第三者の視点

 宇佐美緑。17歳。

 つい先月の10月10日に誕生日を迎え私は17歳になった。

 親友の白雪は私の家に来て手作りのケーキと手編みの手袋、そしてとびっきりの笑顔で祝福してくれた。


 そんな最高の誕生日を私は毎年送っている。


 きっかけは小学校6年生のとき。

 白雪から私に話しかけてくれた。

 それから毎年お互いの誕生日を祝うのが慣例になっている。去年私は初めてお菓子を作り、大失敗した。それでも白雪は笑顔で食べてくれた。

 白雪はちょっとずれたところがある。自分の容姿が飛び抜けてかわいいことや自分の噂にまったく無頓着だ。

 そんな白雪に私はこの子を守ってあげたい!なんて思ってしまった。

 そしてそのまま中学校、高校と同じところに進学した。


 私は中学校からバスケを始めた。理由は私が背が高かったから。身長167cmはちょっと自慢な反面、目立つので恥ずかしくもある。

 そんな私はバスケのセンスに恵まれていたのかすぐにスタメンに名を連ねるようになった。試合の度に白雪はお弁当を作って持ってきては応援してくれた。

 中学校のバスケ部は地域ではそこそこ強い方だったが特別目立つ成績をあげた訳でもない。なのに、白雪には話していないが実は高校はいろいろなところからスカウトが来た。でも白雪と同じ高校に通いたかった私は全てのスカウトを断り私立紅葉園学園をスポーツ特待生として受験した。


 私の家はさほど裕福ではなく私立の学費は重荷になるのでなんとしてもスポーツ特待生で入学したかったのだ。普通に受験をしてもおそらく合格できるぐらいには勉強もしていたが、やはり学費はネックだ。しかも紅葉園学園の学費は普通の私立に比べてちょっと高めな設定だ。

 そのぶん、部活棟にはシャワールームがあり女子用の方にはドライヤーまで付いている。値段のぶんは設備の充実にまわされている。


 実技試験は面白いものだった。

 受験生でチームを作り先輩たちが相手となって試合を繰り返す。

 私はCFで試合に出たが先輩の方が力が強く背も高かったためほとんどなにもできなかった。それでも意地で何度もリベンジした。そのおかげかその場で合格を言い渡されてほっとした思い出。

 白雪は普通に受験をして、一緒に合格発表を見に行った。

 白雪も無事に合格。高校も同じ学校になった瞬間だった。


 入学して瞬く間に白雪は有名人になった。まぁあれだけ可愛ければ仕方ない。誰にでも優しく挨拶して世話を焼くから勘違いする男もなかなか出てこない。3ヶ月が経った頃、白雪に告白することが暗黙の了解の内にタブーとなった。


 そんな白雪との学園生活。部活も大変だし、勉強にも力を入れてる学校だけあってレベルも高い。それでも充実した学園生活だと胸を張って言える。


 そして1年と半年が過ぎた頃。

 白雪は彼と出会った。

 彼は私の目にはひどく歪に見えた。

 冷めた瞳と声で人を遠ざける。しかしなにかを求めている。そして諦めている。

 そんな彼にわたしは出会った。


 そして初めて白雪が心を惹かれているのを見た。

 そして試した。彼の絶望を垣間見る自信があるのかと。

 白雪はきっとまだ気がついていないのだろう。自分が彼に心惹かれていることに。

 そして答えた。

「もっと知りたい人」

 いつもは可愛らしいぱっちりとした瞳は大きな決意に満ちていた。

 本当に自分のことになると無頓着だ。

 気がついているのだろうか?

 白雪が初めて自分で他人を知りたいと言っていることに。

 あまつさえ迷惑になると言いながらも彼の周りを探っていたことを。

 彼の話を瞳を輝かせ聞いて、彼の悲しい話を聞いて瞳を伏せていることに。

 きっと気づいていないのだろう。


 白雪は空気が読めすぎる。だからいらない気をまわして苦労を背負い込んでることも多い。それでも他人には深く踏み込むことなどほとんど、いや、まったくない。それが白雪のスタイルだったはずだ。


 その白雪が自分から踏み込む彼。


 まだ恋とは言えないのかもしれない。


 それでも私は親友のためにできることをしてあげようと誓った。


 願わくは白雪が幸せになるように。

 そして彼が求めているものを白雪から手渡せる、そんな日を夢見て。

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