第7話出会いは小説より奇なり

 ~白雪side~


 日曜日。


 私はいつも通り6時に起きると2匹の猫に朝ごはんをあげていた。

 今日は緑ちゃんと近くの教会のバザーに行こうとお約束している。

 教会のバザーは月に1度、最後の日曜日に行われている。今までにも何度か1人で足を運んだことがあるが、焼きたてのパンを売っていたり地域の人が野菜を売っていたり、その野菜を作っている人たちが屋台をやっていたりとちょっとしたお祭りのようになっているのだ。

 緑ちゃんも楽しいと思うから一緒に行こうよ♪と誘ったら快くうなずいてくれた。

 お母さんと朝ごはんを食べながらその話をすると

「なにか良いお野菜あったら買ってきてちょうだい」

 とお小遣いまでくれた。

 私は毎回足を運んでいる訳ではないがこの教会のバザーが大好きだった。

 緑ちゃんにかわいいって言ってもらえるお洋服♪と思ってクローゼットを開けてお洋服を選ぶ。

 緑ちゃんはいつもパンツスタイルの格好良い服装が多い。逆に私はスカートとかワンピースが多い。

 今日はこれ!っと決まるまでにちょっと時間がかかった。ちなみに今日は白のワンピースに薄いピンク色のコートにした。

 バザーは10時から。約束は9時半に私が緑ちゃんのお家に迎えに行くことになっている。

 今は9時15分。ちょっとバタバタしながらも、お母さんにちゃんと「いってきます」を言って家を出た。


 ~白夜side~


 日曜日。


 今日は施設のバザーの日だった。いつもは準備が始める時間の前に頑張って起きては、なにかと理由をつけてサボっていたのだが、今日はおもいっきり寝過ごし準備に巻き込まれていた。

 なるべく人に関わりたくなかったので、1人黙々とパンを焼いていると、施設の先生が来て

「白夜くん。パンを焼き終わったら売る方もよろしくね」

 と言って、俺が返事をする前に忙しそうに去っていく。

 めんどくせぇと思いながらもとりあえずパンを焼く。施設の他の子供たちに売る方は押し付けようかとも思ったが、さすがにまだ高校生にもなってないやつに任せて良い仕事じゃないなと思い、気を取り直し

 て焼き上がったパンを売り場まで持っていく。

 そろそろ10時。バザーが始まる時間だ。


 パンを焼く方をお手伝いの人たちに任せて、俺はパンを売ることにした。先生に頼まれたのは俺だからしょうがない。そう思いつつも、無愛想な自分に合ってない仕事だと思いながら売っていた。


 元々このバザーは売り上げが目的ではない。地域の人たちが楽しめるような場を用意するということで毎月やっている催しだ。


 焼きたてのパンはいつも好評らしく今日もちょっとした列になっていた。

 やたら女子が多いのは気のせいだろうか……。

 仕事に集中すれば気になくなると思い、気を引き締め直した瞬間。あの甘い声が聞こえた。

 ばっと列を見るとこの前の女子ふたりが喋りながら列に並んでいた。

 まぁ、隠すほどのことでもない。

 諦めて接客に戻ったつもりだが、動揺しているのは自分でもよく分かった……。


 ~白雪side~


「今日行く教会ね、児童養護施設も兼ねてるんだよ。みんな元気でかわいいんだ♪」

 道すがら、緑ちゃんに今日行く教会の説明をした。

 緑ちゃんは

「教会が児童養護施設って今どき珍しいわね。じゃあ今日のバザーはその資金集めになってるのかしら?」

 と続けたので

「ううん、違うよー。あくまでバザーは地域の人たちが楽しめる催しってだけだよ♪」

 と教えてあげる。


 バザーに着いた。もう人が大勢集まっている。そのなかでも焼きたてのパンのところにはちょっとした行列になっている。心なしかいつもより女の子が多い気がするが、まずは緑ちゃんに焼きたてのパンを食べてもらおうと思い列に並ぶ。

 売り子さんの手際が良いのかすぐに順番になった。ちなみにメニューはメロンパン、クロワッサン、バターロールの3種類だ。

 緑ちゃんは早々にクロワッサンとバターロールと決める。私は並びながら「今日はメロンパンかな♪」と決めていた。


「いらっしゃいませ」

 と言われたので

「メロンパン1つと……」

 と売り子さんの顔を見ると一色くんだった。

「えっ!?一色くん!?」

 私は思わず声に出してしまう。隣の緑ちゃんを見ると呆然としている。

 そこに教会のシスターさんが通りかかった。

 私が「一色くん」と呼んだことに気がついのか

「まあまあ。白夜くん、お友達来てたのね。なら一緒にパン食べてらっしゃい。こっちは私が引き受けるから」

 とパンをどっさりくれて一色くんを売り場から追い出した。

 緑ちゃんはいち早く状況を察して

「じゃあ席取りに行きましょ」

 と言って辺りを見回す。

 私はパンをどっさり持った一色くんが困ったような顔をしていることに気がつき

「一色くん?どうしたの?」

 と聞いた。一色くんは

「いや。なんでもありません。あそこ空いてますよ」

 と言ってさっさと行こうとする。しかし動揺しているのはよく分かった。私も驚いている。だってあそこで売り子さんをしているっていうことは……。

「緑ちゃん。あそこ空いてるって」

 緑ちゃんに声をかけて3人で4人掛けの席に座った。

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