第1話Girl meets boy

 校舎裏。夕方。太陽の日が陰り少し肌寒くなってきた時間。

「……一目……惚れでした……。付き合って……ください」

 ちょっと泣きそうな声で、しかししっかりと耳に届くよう声を震わせて想いを告げる少女。

「申し訳ないけどあなたこともよく知らないのに付き合うとかないから」

 それに、にべもなく突き放す少年。

「はぁ、うざったい」

 話は終わったとばかりに振り返り、帰り出す。

 少女は声を出して泣き始めた。陰でこっそり覗き見てた(少年は気がついてた)のだろうその友達と思われる人たちが飛び出してきて慰めにかかっている。


 少年の名を一色白夜と言う。


 ここ私立紅葉園学園の1年生で、学園全体で知らない人の方が少ない有名人だ。

 テストをすれば当然のように学年主席であり、その切れ長な目が特徴的な整った顔立ちで、学園の女の子の注目の的である。よって告白してくる者は後を断たない。入学してもう半年以上が経ち秋を迎える頃になっても白夜の日常は変わらなかった。


 その白夜も気がつかなかった校舎裏の更に倉庫の裏、とある少女が事の成り行きを見守っていた。


 その少女の名を東雲白雪という。


 こちらは学園の2年生で、こちらも学園全体で知らない者の方が少ない有名人である。かわいらしい顔で、常に柔らかな微笑みを絶やさず周りを和ませ、誰にでも優しく、空気を読むことに長けている彼女は学園の女神と呼ばれ告白することが暗黙の了解のうちにタブーとすらなっている少女である。


 東雲白雪の名誉のために言っておこう。決して覗くつもりではなかったのだ。ただ先生に草むしりを頼まれ、その優しさゆえに断れず、真面目な性格のおかげで倉庫の裏まで草むしりをしていただけなのだ。

 そこで勝手に告白劇が始まってしまい出るに出られず最初から最後まで聞いてしまったという理由だ。


 それにしても……と白雪は思う。

 断り方も酷いけど、うざったいってなんだろう?と。

 白雪自身は先の件を知らないため普通に自分に告白してくれる人がいないだけだと勘違いをしている。だからこそ、こうやって告白してくれた想いをうざったいの一言で片付ける少年のことが気になった。

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