SU・SH・I

佳原雪

SUicidal・SHow・Idol

地下は揺れる。暗いステージで激しく陰鬱な音に合わせて歌う、私たちはアイドルだ。通り名はスーサイダル・ショウ・アイドル、通称SUSHI。スーサイダルの由来は激しいダンスと重低音の音楽にある。上等の酒のような陶酔を誘う激烈なパフォーマンスは、歌い踊る肉体を次第に破壊していく。


SUSHIは二人のアイドルグループだ。色味の違うアイドル二人を抱き合わせ、ユニットとして売り出す。皆、新鮮な生身の体でデビューし、体を壊すたびに新たなメンバーに交代される。私は何人目だったか。知らないし知りたくもない。


舞台上でくるくる回り、期限が来て廃棄されるまでのわずかな時間を生きる生鮮食品。それが私。私たち。私がいなくなったら、相手の子には新しい相方が宛がわれるだろう。

そう思っている間に、私は三人と組み、そのことごとくを看取った。ゴミ箱へと廃棄された哀れな少女の末路を思う。彼女たちの悲鳴を、苦痛を、涙交じりの『一緒に頑張ろうね』の声を、覚えている。


足を、耳を、声を失い、ステージを降りた彼女たちのことを、私は覚えている。忘れるものか。


レーンを回る私たちは誰にも手に取られることはない。輝くレーンは欺瞞の花道。死へと進む片道切符。ここが全てのどん詰まり。行く先などとうに知れている。


解体、解体だ。プロデューサーを探し出し、SUSHIを解体する。これ以上の犠牲を出さないために。この狂ったSUSHIのサイクルから抜け出すように。

アンコ、タマゴ、ユナギ。私は先に死んだ三人を思い、祈る。スーサイダル・ショウ・アイドルは私の代で終わりにする。その決意を胸に抱いたまま、私は単身、舞台へかけだして行った。

地下は今日も揺れる。激情を押し殺した少女の悲痛な歌声叫びによって。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SU・SH・I 佳原雪 @setsu_yosihara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ