パソコンの調子悪い(スマホあるから何とかなるけども…)
永劫の静謐に包まれた世界だった。
そう。だった。それはすでに過去のもの。これから先も続くはずだった静寂を破ったのは不意の闖入者たちである。自然の法則に導かれた彼女らは、瓦礫とともに上方より現れた。
有り体に言えば、転がり落ちてきた。
「うぎゃっ」「ぐっ」
落ちてきたのは二人人の類。槍を抱えた人間の娘と、そしてやはり楽器だけは抱きかかえて守った草小人である。
女人馬と吟遊詩人だった。
しばらく苦痛に呻いていたふたりであるが、やがて女人馬が立ち直ると起き上がった。
「……生きているか」
「うん、まぁ……」
声を頼りに近づく二人。周りは明かりもなく真の闇である。これではなにも見えぬ。
「参ったな…明かりをなんとかせねば」
「う~ん。ちょっと待ってね」
吟遊詩人は呪句を詠唱。ごくささやかな魔法を発動させる。
彼女の指先に灯ったのは、小さな炎だった。冥界より呼び出された
彼は指より離れると、ふよふよ浮かびながらあたりを照らし出した。
そこは、広大な空間だった。
奥に向けて並んでいる左右の石柱には精緻な
まるで謁見の間のよう。
されどここは生者のための世界ではなかった。各所に安置された棺。中でも中央、最も深く掘り抜かれた、言い換えれば霊力の強い場所にあるのはとりわけ豪奢な棺である。
ここは、墓所なのだということを、侵入者たちは悟った。
そして。
「───こんな所までやってくる者がいるとは。さては、私を探っているのは貴様らか」
ひどくしわがれた声。
奥より姿を現したのは、ローブにフードで正体を隠した怪人。力ある魔法使いなのは、同じく魔法使いである女人馬たちには明白であった。
そして、彼───彼女やもしれぬが───が両手で抱えている品に女人馬は見覚えがあった。
部族の宝である、古のランプ。
女たちは察した。目的地はここなのだと。
女人馬は叫んだ。
「お前か。我が一族を殺し、宝を奪ったのは!」
「───ふむ?その顔どこかで───なんと。生きていたか。
怪人は得心すると、片手を振り上げる。
直後。
ふたを跳ね飛ばしながら棺より起き上がったのは、埋葬されていたのであろう死者たち。全身を包帯で包まれ、保存処置を施された
「こんなことなら、最初にランプを盗み出す際に皆殺しとしておくべきであった」
「―――最初?」
敵手の言葉に、女人馬が覚えたのは違和感。まさか―――
「娘の姿で数年間ともに過ごしたよしみだ。神々への供物として捧げてくれよう」
「……貴様ああああああああああああああああああああああ!」
怒りをあらわとした女人馬を愉快そうに見下ろしながら、邪悪なる魔法使いは命じた。
「さあ。殺せ!こやつらの断末魔を供物とするのだ!」
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