ウマでフレンドなのがひとりいますが某アニメとは関係ありません(昨夜のあれにはびびった)

「しかし魔法生物や死にぞこないアンデッドはともかく、こいつらは一体どうやって生きているのだ?」

女人馬の槍が、巨大鼠ジャイアント・ラットを真っ二つとした。

大きいものになると1メートルを超えるこの怪物は強敵ではないが、伝染病を媒介するというある意味非常に厄介な生物である。女人馬たちの周囲には既に何匹もの巨大鼠ジャイアント・ラットの屍が転がっていた。今倒したのが最後である。

女人馬の問いに、女賢者もかぶりを振る。こんな丸々と太った巨体を維持できる程のえさが地下の奥深くにあるとは思えぬが、何かからくりがあるのだろう。賢者にだってわからぬことはある。非常に気になるところではあるが。

地下に潜って既に半日。

一行は順調に進んでいた。途中多数の怪物と遭遇し、そのことごとくを葬って来たわけだが。首なし騎士デュラハンがいれば並大抵の怪物相手には無敵である。

とはいえ、生者たちにはこの行軍はなかなかにつらいものがあったが。

そろそろ休憩するか、と、一同は場所を見繕う。

何部屋か先で、良さそうな空間が見つかった。吟遊詩人が中を調べ、お墨付きを与えた。

「……はぁ。疲れたよぉ」

だらしなく五体を投げ出す吟遊詩人。ほとんど五体投地といった勢いだった。

女人馬も腰を落ち着け、女賢者は両の瞳を閉じる。死者たる彼女の精神的疲労は回復しないが、気分は少しだけ楽になった。

この地下迷宮ダンジョンは、それ自体が墓碑なのだろう。弔われぬ人々の無念が宿る、都市の亡骸。

一同は懐より食料を取り出すと、口にし始めた。よく焼き締められたパンとそしてある種のチーズである。水袋の中身も大切そうに口に含む。この探索は長丁場となるであろう。行くべき道筋は分かっても、途中あらゆる障害が行く手を阻むから。

「しかし……奇妙な構造だな。まるで地上の都を思わせる」

「あー。確かにそうだねえ」

「………」

実際の所。道中には様々な構造があった。日干し煉瓦で作られたのであろう部分。明らかに後から掘り抜かれたのであろう穴。更に下には水道だったのであろう構造も見受けられる。中を歩き回って判明したことではあるが、住み着いたのであろうもの達によっていろいろと手を加えられているのではないかと思われた。

そして、幾度か遭遇した闇の種族。

どうやって入り込んだのかは定かではないが、奴らもまた地下の住人であった。ほとんどが小鬼ゴブリンなどの小物であったが。都の外に繋がっているのやもしれぬ。

膨大な歳月を経て拡張を続ける、地下の世界。それが、この地下迷宮ダンジョンであった。

「さて、と。そろそろ行こうか。そろそろ目的地にたどり着ければいいのだが」

女人馬の言葉に、一同は立ち上がった。休憩は終わりだ。そろそろ侵入に気付かれるだろう。敵は力ある魔法使い。防備を固めているはず。

再び隊列を組んだ一行は、部屋を出ようとした。

その時のことである。

部屋が、揺れた。いや、それは揺れなどというレベルではない。鳴動だった。

「――――!?」「なんだ!?」「ひぃ!?」

ひび割れていく足元。

罠は、確かになかった。されど、老朽化した構造は侵入者の体重を支えきれなかったのだ。

辛うじて崩れなかった床を掴んだ女賢者は、見た。崩れて行く足場もろとも落下していく仲間たちの姿を。

女人馬と吟遊詩人。彼女らは、奈落の底へと堕ちていった。

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