女賢者が歴代デュラハンでも首刎ねられた回数トップに躍り出た(第二位の女勇者でも二回やろ!)
女賢者は寝込んだ。もちろん名目上のことである。いやまあ寝ていたのは事実だが。魔法を使ったことによる精神的疲労が残る状態で陽光の下動き回るのは厳しかったから。適当な理由を付けて霊廟に籠もったのだ。
幸い、今回の騒ぎで死人は出なかった。連れ去られた若者は生きていた。ぐるぐる巻きに縛られていただけで。彼の縄を解き、壮年の男を叩き起こし、
唯一の問題はといえば、女賢者の首が飛んだ瞬間を目にした壮年の男だったが、夢だったのだろう、ということで押し通した。好都合なことに彼は、直後に
帰還して後も女賢者は大忙しである。負傷者の治療に駆り出されたのだ。優れた医術の使い手でもある女賢者は一通り怪我人を治療し終え、日の出とともに霊廟にこもって眠りに就いたのである。村人たちも特に不審には思わなかった。
そうして、次の日の昼を過ぎたころ。
起き出した女賢者は、支度を始めた。
◇
「いやはや、助かったよ。まさかあんたひとりで奴らを倒すとはなあ」
そこは涼しい屋内。日干し煉瓦で作られた建物の二階であった。
分厚い絨毯に座っているのは二人。腕を包帯で吊った壮年の男と女賢者である。砂漠の家屋は装飾に乏しい。だから代わりに、絨毯に凝る。大変に美しく織られた毛織物はこの地域の主要な産物のひとつでもあった。食うに困ったら絨毯を売れ、というほどに高価なこの品は、どこの家にも必ずと言っていいほどある。
「これは礼だ。取っておいてくれ」
男が差し出したのは湾曲した小さな剣。受け取った女賢者が中身を改めると、刃は銀でできていた。
魔法の鉱物である銀は貴重である。ありがたく懐にしまう女賢者。
それを見届け、男はところで、と切り出した。
「しかし、あの時確かにあんたの首が飛んだ、と思ったんだが……あれか。幻覚の魔法でも使ったのか?」
問いに、女賢者は苦笑。たぶん夢でしょう、と曖昧に答える。まさか本当に首が飛びましたなどとは言えぬ。
男もそれで納得したか、頷く。
「なんにせよ、感謝する。
あんたの行く先に、水神と太陽神のご加護があらんことを」
それに答えると、女賢者は旅立った。
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