最近なんで黒幕キャラが思わせぶりな事ばっかり言って具体的には何一つ言わないのか分かった気がする(未定なんだ)
天地が逆さになったかのごとき光景であった。
上空に広がるのは湖。見渡す限りのそれは、上下逆さまにも関わらず水の一滴すら落ちてはこない。
対して下方に広がっているのは夜空である。雲がいくつか出ているが、満天の星々が美しかった。
異界。西方でなら妖精郷と呼ばれ、ここ、東方では仙界とか魔境などと呼ばれる霊の領域である。いわゆる
今。この小さな世界は、久方ぶりに主人を迎えていた。
上空より水面を突き破り、降下してきたのは一人の娘である。道服を身にまとい、腰に剣を帯びた、十くらいの美しい少女だった。
されど、その物事は尋常ではない。魔法の心得がない者ですら、その霊気に恐れおののくであろう威圧感。
内に邪悪なる霊を。邪仙を宿しているのだった。
彼女はふわり、と雲の上に着地。そこに建てられた立派な屋敷へと入っていく。
驚くべき広さであった。
中では幾多の使用人が働き、その機能を維持している。されど彼らは人間ではない。よくよく見れば、人の形にこねられた粘土人形だったり、人間そっくりだが表情の欠片も持たなかったりする。いずれもが魔法で作られ、あるいは使役されている従僕どもなのだ。
出迎えた召使へと剣を預けた娘は、奥へと進む。この屋敷は彼女?の持つ隠れ家のひとつである。復活したばかりで力が足りなかった。休息し、回復を期さねばならぬ。
召使どもに用事を言いつけると、彼女は寝室へと入り、寝台に身を横たえた。
◇
朱色の門の前に、巨大なカブトムシが降り立った。
そこは、死せる女武者の住まう洞府である。住人の帰還を認めた扉は自ら開く。門番の使鬼が開いたのであった。
主人と2匹の猫を乗せ、カブトムシはのそのそと中へ入っていく
「ついたぁ」
扉が閉まり、陽光が遮られてからの事。つり目の女は上記の背から飛び降り、うん、と体を伸ばした。疲れた。住人たちは皆眠っているはずである。自分も荷物を整理したら寝よう。
と、そこで。
「にゃっ」「にゃぁ」
連れ帰って来た猫たちが鞍から飛び降りたかと思えば、走り出したではないか。それも奥の方。主人の寝室目がけて。
「あ、ちょいまち!あかんって、そっちはまずい!」
慌てた女は駆けだした。魔法で足を止めるのは難しい。彼女は五行の術、特に金行や水行の達人であるが、いずれもが少々威力が大きすぎるのだ。傷つけるわけにもいかぬし。
おりゃ、と飛び掛かり、糸目ででっぷりとした猫の方を確保。されど、黒い子猫の方はどんどん走っていく。そのまま駆けこんだのは、やはり女武者の寝室。
勢いのついた体は、扉に激突した。
「あちゃあ……」
思わず顔を手で覆うつり目の女。部屋の主人はこれで目を覚ましたはずである。何事か、と詰問されるだろう。どう言い逃れすればいいやら。
悩んでいるうちに、猫は扉をひっかき始めた。にゃあにゃあ叫ぶさまは悲壮感すら感じさせる。
やがて、寝室の扉が開き、中から首のない女体がぬぅ、っと顔を出した。
その足元からにゃあにゃあと叫ぶ子猫。まさか女武者に何か訴えようとしているのだろうか?だが猫である。謎だった。
等とつり目の女が考えているうちに、女武者が口を開く。
「……ぉ?」
「あ~……さ、さっき拾ってん。帰ってくる途中で。ほら、河原で」
「………ぅ……」
「え?おちびちゃんたちなら見てへんけども。お使いに行ったんか」
「…ぁ……」
跪いた女武者。彼女は黒い子猫へと手をやり、撫でる。死者と言えども猫はやはりかわいいのか。そうなのか。
新発見をしていたつり目の女の前で、それは起こった。
「みゃ」
延びた爪。意を決したように見えた子猫のそれが、女武者の繊手を。傷つけるには強力な魔法が必要なはずの死者の指を、切り裂く。
死者と妖怪。二人の女は、揃って驚愕の表情を浮かべた。
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