そういえば純然たる空中戦ってひょっとして初めてだろーか…(と思ったら星霊が一度やらかしとるな)
地の果てまでも広がる森林。眼下に見える山々の頂。星の光に照らされし広大な雲海。
それらが、目に入る全てだった。
「ぁぁ…っ!」
兄の唇から漏れ聞こえるのは恐怖の声。無理もなかった。彼が今いる場所は、高空。飛翔する、とてつもなく巨大な猛禽類の脚に鷲掴みされているのだから。
「兄ちゃん……怖いよう」
聞こえてくる声に振り向けば、もう片方の脚に掴まれていたのは妹だった。彼女もこの怪鳥に捕まったのだ!
大人たちとはぐれてしまった。女武者は優れた魔法使いだが空は飛べない。一方で娘の長椅子は飛べはするだろうがしかし、この怪物にやられて落下したのだ。助けにはこられないだろう。
万事休す。このまま自分たち兄妹は、こいつに喰われてしまうのだ。
涙が出てきた。
「ぅ…ひっく…」
「兄ちゃぁん……」
つられて泣き出す妹。今までは助けてくれる大人がすぐそばにいた。されど今回ばかりは絶望的に過ぎる。
子供たちは、ずっと泣き続けた。
◇
───何と言うことだ!
女武者の内にあったのは、まずその一点。
あの怪物には追いつけぬ。二十メートルもの巨体で軽やかに飛翔する化け物である。走っても追いつけまい。子供たちを助ける術はない。
されど、そうは考えぬ者もいた。
「乗って!あ、その前に軽くして!」
傍らで叫んだ娘の方へ目をやると、彼女は背負った荷物を投げ捨て、ふよふよと浮かぶ長椅子から荷物を縛る縄を解きつつあった。
そうだ。彼女は飛べるのだ。まだ追いかけられる!
理解した女武者は早かった。首を投げ捨て、具足。甲冑の胴の部分などを手早く外していく。籠手なども外したくはあったが怪鳥を見失ってしまうだろう。
身軽になった女武者は、太刀のみを手に長椅子へ飛び乗った。
先に跨がっていた娘が呪句を唱え、長椅子にしがみつく。そこへ抱き付く女武者。
魔法の長椅子は、ふわりと空へ舞った。
◇
怪鳥は、今日の糧が得られたことに安堵していた。
彼は遥か西方より流れてきた魔獣である。両翼を広げれば屋敷を覆い隠せるほどの巨体は、種族の平均と比べればそれでも小さい。本来の生息地であれば
もっとも、この近辺は餌が豊富とは言い難かった。
今両足で捕まえている二匹の
早く食べたい、などと考えながら、彼は家路を急いだ。
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