戦後処理はいつも早い(くっころの伝統)

岩妖精ドワーフ森妖精エルフは伝統的に仲が悪い。

それは殺し合いに発展するようなものではないが、だからといって集団としての両者が交わり合うことはあまりなかった。とはいえ彼らも闇の種族や不浄の者どもの前では肩を並べる戦友でもある。敵の真横を突いた岩妖精ドワーフの騎兵部隊の乱入で生じた隙を見逃すほど、森妖精エルフたちは甘くない。

残った魔力と体力を注ぎ込んだ強烈な攻勢は、闇の軍勢の中央を散々に叩きのめした。小ものは多数逃散していったが、組織化されぬ敗残兵どもは脅威ではなかった。疲弊しきった森妖精エルフたちの長は、岩妖精ドワーフたち―――神官戦士の文によって援軍にやってきた近隣の岩山に住まう者たち―――の王とぎこちなく握手を交わし、謝意を伝えた。もちろんその横で、してやったりという顔をした神官戦士がいたことは言うまでもあるまい。

勝利し、部隊を再編した三軍。すなわち森妖精エルフ岩妖精ドワーフ、森に住まう小さき者たちは隊列を組み、敵の本拠地へと進軍した。主力を失った闇の者どもの戦力は事実上失われているため攻略は容易であろうと予想されたが、何しろ相手が相手である。油断はできなかった。

闇の種族の地下都市。その複数の入口より突入した三軍は、その抵抗の弱さに拍子抜けした。組織的な反抗は全くなく、たやすく攻め入る事が出来たのである。守備部隊の指揮系統に何かあったことは間違いあるまい。

素早く内部へ浸透した彼らは、都市の最奥、神殿の中で多数の黒焦げ死体と火球ファイヤーボールの魔法が発動した痕跡を発見した。

激しい戦闘があったことは明らかである。詳しく調べた彼らは、炭化した死体の中。まだひとつだけ、完全に死してはいない者がいるのを発見し驚愕した。酷い火傷を負っていた彼は人間の少年であった。

傷ついた生首(不死の怪物である)を抱きしめて仮死状態にあった彼はすぐさま後方へと搬送されることとなる。

神殿は略奪された後(もちろん戦利品は戦いに参加した者達に公平に分配された)、完全に破壊された。

これによって、闇妖精ダークエルフ森妖精エルフとの、大森林における戦は決着がついたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る