酒にはうるさそう(ドワーフの伝統です)
再び目を覚ました神官戦士は、体力を十分に回復させていた。起き抜けに食を求めた彼は凄まじい勢いで出された物を平らげ薬師を呆れさせたものである。
なお、彼は食事を終えた後に薬師へ質問した。敵を。すなわち追っている
薬師は無言で首を振った。神官戦士はそれを知らないと解釈したが、もちろん実際は異なる。村人の誰に聞いてもおおむね似たようなものだった。
回復し村へと出た彼は、大森林の見たこともないような不思議な樹木に目を丸くし、半球型の家屋に驚いた。飼われている恐竜に吠えられた時はひっくり返ったほどである。
彼は翌日にはすぐさま神官としての勤めを果たし始めた。墓地で祈祷をあげ、村に幾重も張られた結界を修復し、子供を祝福した。火神の威を持って食料庫に迫る病魔や腐敗を退けた。徳の高い神官であることは誰の目にも明らかであった。
そうして、一日が過ぎた。
◇
火神の神官は昼に休息をとる。とはいえそれは病人や怪我人、昼に勤めを果たすものにまでは適用されない。
そんなわけで昼のうちに働いた神官戦士のいる場所は酒場であった。
「……ぷはぁっ。
なかなかいけるのぉ」
「いいのみっぷりですねぇ、神官様」
「うむ。旅をしておるとこれが楽しみでな」
酒場の主人と言葉を交わし、神官戦士は生の喜びを噛みしめていた。彼ら岩妖精は暑いのは平気だが、このあたりは湿度も高い。むしむししているのだった。そこに爽やかな喉ごしの酒である。素晴らしい。
店内を見回す。この酒場は兼業農家らしく営業は夕方のみである。店主の娘らしい小さな子が手伝っていて微笑ましかった。
ちらほら現れた他の客らと雑談に興じつつ、ほどよく酔いが回ってきた頃。
「のお、ご主人」
「なんです?神官様」
「少し気になったんじゃが。墓場の向こう、誰か住んどるじゃろ?」
「あぁ。あれですか。何ヶ月か前に村に住み着いた魔法使いですよ。まだ子供ですがね。腕は確かです。何しろ村を襲った
「ほぉ。それはすごいのう」
「おっと。大魔術師扱いすると照れちまうんだった。神官様も話をするときは気をつけてくださいな」
「うむ。気をつけるとしよう」
神官戦士は頷き、そして思考する。そんな優れた魔法使いであるならば、彼の追っている
きっと、その魔法使いとの出会いを指していたのだろう。手がかりを持っているのだ、おそらく。
明日、訪ねてみよう。そう思いながら、神官戦士はもう一杯注文した。
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