旅は道連れ世は情け(女勇者は善意100%でできています)
太陽が照り付ける砂漠を往くのは3人の人影。
すなわち老賢者。
皆が、闇の者どもより奪ったマントで陽光より身を守り、物資を背負って進んでいた。
女勇者や老賢者としては夜に進みたかったのだが、
砂漠越えは過酷である。荷駄なしで移動するとなればさらに。しかし、女勇者の背負った背負子には凄まじい量の荷物が載せられていた。数十の闇の者の物資である。すべてではないとはいえ、生者ふたりを賄うには十分な量があった。
一行が向かう先はオアシスであった。
水袋から乳酒を口に含んだ老賢者は、最後尾で黙々と歩いている女勇者を見やった。
首のない肉体。マントの下に着ている白い衣は、出会った晩、左手でぶら下げていた布包みである。魔法の品らしい。右手には今も戦斧。マントの下に隠されているが、ゆるく波打った黒髪を持つ、穏やかな美貌はきっと陽光にうんざりした表情をしているのであろう。そして、腰から下げている二つの竹簡の束。
彼女との意志疎通は大変だった。老賢者は魔法の心得がない。彼女の唇の動きを読み取らねばならず、時間がかかった。一方、子供の方は彼女と簡単に意思疎通できたが、彼と老賢者の間ではやはり言葉が通じぬ。子供はなんと初歩的な魔法を知っていた。
せっかくの機会である。オアシスにたどり着いたら、彼らの魔法について教えを乞うてもいいかもしれぬ。
やがて、一行は小休止。老骨にこの旅は堪えるが、陽光の中で歩き続けている
「のう。あんた、どうしてこんな砂漠まできたんじゃ?」
老賢者は女勇者へと話しかけた。彼女の素性については最小限の事しか聞いていない。闇の種族に斬首され、生への渇望からこのような姿に転生してしまったこと。何十年も旅を続けている事。闇の種族を狩っていること。太陽神の神官だったこと。今も信仰は保っている事。その程度。
女勇者はしばし考え、腰の竹簡の片方を手渡してきた。いつも大切そうに持ち歩いている手紙を。
老賢者はそれを受け取ると、丁重に拝見した。中身を見る。相手の武勇を讃える内容だった。差出人の著名を見てから、女勇者の顔を見る。
相手の唇が動いた。
「なんと。
女勇者は微笑んだ。その解釈で合っているらしい。
彼女ならばいつかは目的を達成できるかもしれぬ。
「なるほどのう……なら、
せっかくじゃしワシも一緒に聞いてみるか、と付け加えると、老賢者は手紙を女勇者へ返した。
小休止を終えると、一行は旅程を再開した。
目的地へたどり着いたのは、これから数日後の事である。
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