No.34 薄々感じてたけどめっちゃ大食らいだよな?
「キタ! ついにキターーーー!」
「ちょww神哉くん急にテンション高いってwww」
「無理に上げようとしてる感がすごいぞ」
ふっ、無理にでもあげないでどうするって言うんだ。空港からバスに揺られ、降り立ったその目の前に広がるのは別府湾!
旅行とか久々過ぎてテンション上がるぜ!
「早速ホテルに荷物置いて観光しよう!」
「私、おなか空きました! 早く行きましょう!!」
「よし、先にホテルロビーに着いたほうが飯奢りだ」
「ヨーイドン!」
「あ、バカ! ずりぃぞ!」
彼杵はずるしてまで飯を奢りたくないのか泥棒スキル全開でホテルへ駆け出した。それを追うように俺も走り出す。
俺と彼杵の勝負を見て師匠が言った。
「全く、子供だのう、あの二人は」
「いや、ツバキちゃんにだけは言われたくないと思うぞ?」
「あなた、十四歳じゃなかったっけ?」
「ロリババアキャラを忘れちゃダメだよwwww」
その後平戸さんと師匠の取っ組み合いの喧嘩(師匠が一方的に叩く)が始まったらしい。
「ふぅー食べた食べた〜〜」
「食べたとか言うレベルじゃないから! 食べ過ぎだから!」
先ほどの勝負はもちろん彼杵が勝利し俺は昼飯を奢ることとなった。まぁそれは良いとしてだ。
彼杵、大食らい過ぎる!
前々から薄々と感じていたがこいつマジでめっちゃ食うんだよ。いわゆる胃袋宇宙というやつだろうか。
「ドンマイ神哉くんww僕とイクミの旅費まで払ってもらって悪いんだけどさ、ここの食事代もお願いするよ?」
「えぇっ!?」
「ありがとうございマス! お金は来世で必ず返しマスネ!」
「まだ払ってやるとか言ってねぇし! あと現世で返せ、現世で!!」
金ないくせに普通に食事してたからどうするのかと思えば俺頼みかよ!
俺の財布、すでに軽いを通り越して浮きそうだよ......。
突然だが、ここで今回俺たちが泊まるホテルや観光地の紹介をしておこう。
まず別府温泉。
これは別府市にある数百もの温泉の総称のことである。源泉の数も湧き出る量も日本一だそうだ。そんなたくさんの温泉がある中で大きく八つに分けられ、別府八湯と言われている。
今回はその別府八湯の中の
冒頭でもあったように別府湾が近くにあり山の上の方に俺たちが泊まる大型リゾートホテル、杉○井ホテルがあるのだ。
「彼杵、夜はホテルでバイキングがあるんだぞ?食えんのかよ」
「安心してください!バイキングとあらば胃袋の消化を早めたいと思いますので!」
意図的にンなこと出来んのかよ!
それでいて太ってないのは泥棒という職業が関係してるのだろうか。俺の泥棒のイメージは屋根の上飛び回ってるんだよなぁ。痩せそうだな。
泥棒ダイエットとか流行んないかな。
「お、もう五時か。そろそろカズたちに合流しようぜ」
「ヤー!」
俺が席を立ち上がって飲食店から出ようとする。
その時、ちょうど通りすがった女性とぶつかってしまった。
「あ、すいません」
「いえいえ、こちらこそごめんなさいね。お怪我は無い?」
歳はサヤ姉と同じくらいだろうか。なんとも落ち着いた雰囲気のある女性。真っ赤な唇に服の上からでも分かる胸の豊満さがすっごいエロい。
「大丈夫です。お気遣いどうも」
「うふふ、貴方なかなか面白い人を連れているのね」
「は?」
「気にしないで。貴方たちとはまた会えそうな気がするわ」
「はぁ...、そうだといいっすね?」
最後にそんな意味深な言葉を残してお色気お姉さんは出て行った。
......あ~、エロかった。
太陽も沈み始め別府湾が美しく橙色に輝いている。そんな景色を見ながらホテルに戻り、別行動していたカズたちと合流した。
「よー、そっちはどうだった?」
「我らの方は水族館に行ってきたぞ! 我、水族館童貞卒業だ!」
「おー、おめでとうございます師匠。体のほうは大丈夫っすか? 今日は結構日差しもありましたし久々にたくさん歩いて疲れたんじゃありませんか? 夜飯の前にお風呂でゆっくりして来た方が...」
「だから神哉、過保護すぎるってば......」
サヤ姉が呆れたように首をすくめる。
「むぅ、確かに疲れたが我のアルビノは軽いものだからな。平気だ!」
「ツバキちゃんカワイ~な~」
「和人くんww目が性犯罪者だよwwww」
やっぱりカズには少しロリコンの気質があるようだ。ま、師匠の美貌には誰もが見惚れてしまうだろうがな!
なんてったってアルビノによる色白さは並大抵じゃないし綺麗な白髪も相まってまさに妖精。エルフって感じだ。
通行人も皆一度は師匠を見ていくほどだからな。その時、誰かのおなかが盛大に鳴った。
「あ、ごめんなさい。でもそろそろ夜のバイキングですよね? 私の体内時計が言ってます」
「彼杵、お前昼飯どころか間食も異常なほど食ってたよな...。腹どうなってんだよ」
「ワタシも気になりマスネ!」
「お? 珍しいな。イクミが気になることなんて」
「ハイ! アメリカにいた時は大学でよく動物の解剖とかシテマシタ!」
「へ、へぇ...」
うん、夜食前に言うことじゃないな。
その後俺たちはホテル本館のB一階にあるバイキングレストランへと向かった。
エレベーターから降り少し進むと、
「うっわぁ! すごいですね! めっちゃ高級ですよ!......全部食べられるかな?」
「勘違いするな、全部お前のじゃない」
彼杵は一番に駆け出して料理を皿に盛っていく。皆もそれに続く。
俺は言うほど腹も減っていないので全員座れる席を探す。他にも宿泊客が数人見えるがまだ夜飯にしては早い時間なので混雑はしていない。
大き目の席を陣取り彼杵たちが帰ってくるのを待つ。三分くらい経って女性陣が俺を発見しこっちに来た。
「席ありがとね、神哉」
「お前も料理取って来ていいぞ」
「ふわぁぁあ...このお肉、厚い......」
こらこら、立って食うんじゃないよ。彼杵にはお食事マナーを指導する必要がありそうだ。でも彼杵ってなんだかんだで二十歳だよな。
この機に彼杵の過去を聞いてみるのも悪くないかもな。そんな事を考えながら俺も料理を取りに席を立ち上がる。
「おお、こりゃ確かにすげぇな」
並べられた料理を見てまず感じたのはその高級感だった。彼杵の言うように厚くスライスされたローストビーフやバイキングの定番、から揚げにフライドポテトなどなど。和、洋、中と様々な種類の食べ物が置かれデザートやドリンクの種類も豊富。
これは何を取るか迷うな。とりあえず皿を取りに行かなくては。
その時、
「キャッ!」
「おわぁっとぉ! すいません、大丈夫ですか? って、...あれ?」
ぶつかった女性にすぐに謝る。女性は転んでしまったので手を差し伸べると顔を上げた。
その顔には見覚えがあった。
「あら、さっきのお兄さん。やっぱりまた会いましたね」
「はは、ホントですね。お姉さんもここに泊まってたんですか」
「うふふ、お姉さんだなんて久しぶりに呼ばれたわ。うん、貴方の言う通り、私もここの宿泊客よ」
そう、その女性は観光中にもぶつかったあのお色気お姉さんだった。このふくよかながらスレンダーという神ボディは忘れもしないぜ!
アハハ、奇遇ですね! とはまさにこの事だ。
「そうだ、貴方いっぱいお友達がいるみたい。私に紹介してくださらない?」
「え、あぁ、まぁいいですよ」
そう言って結局料理を取らずに皆の下へお姉さんを案内した。俺の友達に何の興味があるんだろうと不思議に思いながらも、エロいから別いいかと思考チェンジ。
だが、この人をただのお色気お姉さんと勘違いしてしまった俺は後々とてつもない後悔をすることになるのだった。
次は置いてけぼりのあの人やっと到着!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます