第十四罪

No.33 犯罪者と旅行に行くと道中が大変?


 温泉旅行。

 それは疲れを癒し、傷を癒し、そして心さえも癒す万能な温泉へと旅行に行くことである。

 エロ同人誌とかでもよくある展開に使われるのが温泉旅行とかだと思う。というか俺がそのタイプのエロ同人誌が好きなだけなんだが。

 とにかく! 温泉旅行は素晴らしいものなのである!

 この素晴らしい温泉旅行に祝福を! なのだ!

 爆裂魔法で宴会芸のドMにいこうじゃないか。

 うん、もう何言ってんのか分かんないね。

 とにかく! 旅行は楽しいものだということだ。

 例え犯罪者でもな!




「荷物の準備は良いか!?」

「「「「「「「やーー!」」」」」」」

「心の準備は良いか!?」

「「「「「「「やーー!」」」」」」」

「よろしい。ならば出発だーー!」


 我が家エントランスにて、旅行出発前の儀式が執り行われていた。簡単な荷物確認と高鳴る気持ちの確認(?)をしていざ出発だ。


「で、行き先はどこなの?」

「やっぱ平戸さん分かってなかったんですね」

「温泉と言えば別府! というわけで大分おおいたです!」

「「わぁぁい!」」


 彼杵と師匠が歓喜の声を上げる。お前らも行き先知らなかったのかよ......。


「ちなみにさ、旅費は誰が払ってくれるの?」

「え? それは自腹でしょ」

「失礼ながら、御主人様とワタシは無一文デスヨ?」

「はぁぁぁあ!?」

「そんな驚くなよwww僕がホームレスなの知ってるだろ?」


 いやいや驚くから! 旅費って意外に高いんだからね!?


「むぅ、仕方ない...。ここは俺が払おう......」

「よっ! さすが太っ腹!」


 俺が二人分の旅費を払うことを決心すると、春昌さんが横から茶々を入れてきた。あんたが旅行に行きたいって言い出したんだからな!

 普通は私が払いますよとか言うところだろうが!!


「やっぱり神哉くんは優しいですね~。惚れ直しました♡」

「優し過ぎな気もするがな」

「いや、二人分ってそれなりに馬鹿にならないわよ? 大丈夫なの?」

「はっきり言って大丈夫じゃないけど、ここに来て置いていくのもダメだろ」

「さっすが神哉くんだ! 一生君の家にたまらせてもらうよwww」


 それはさすがに迷惑なんだが......。ま、これで心残りなく出発が出来るな。

 そして俺たちは我が家を後にして大分、別府温泉へと向かった。




「着きましたね!」

「そうだな!」

「ついにたどり着いたな!」

「うん、空港にな......」


 そう、やっと着いたと言ってもそこはまだ空港。道中がいろいろありすぎてどっと疲れてしまったんだが。

 そんな俺を見て師匠とカズが両肩に手を置いて言った。


「何をそんなに疲れてるんだ神哉」

「元気出せよ! 旅は始まったばっかりだぜ?」

「俺が疲れてんのはお前らのせいだからな!?」


 春昌さんの運転する車で空港まで向かっていたのだが、カズは休憩中に女の子ナンパするし師匠はずっとハッキングの仕事して喘ぎまくって俺がおぶさる羽目になるしでてんやわんやだった。


「ホント、少しは自重しなさいよね二人とも」

「サヤ姉人のこと言えないから!!」


 カズと師匠を注意するサヤ姉だが、サヤ姉はサヤ姉で勝手に一人で道に迷ってどっかに消えるという奇行に走っていた。パーキングエリアなのに迷子のサヤ姉を探すのに相当な労力は使ってしまった。キャバ嬢で隠れドMでアラサーに追加して方向音痴とかキャラ渋滞してるぞ。




 その後、離陸までの時間ひたすら機内食を貪っていた彼杵は飛び立ってすぐに眠りこけた。

 俺の横の席でいびきをかいて寝ている。いや、女の子はどんなにうるさかろうと寝息と表現してやろう。


「あっちに着くのは昼過ぎぐらいですね」

「観光もかねてホテルに行く前に昼飯に行きましょうか」


 俺と春昌さんは早速大分でのスケジュールを考える。


「しっかし、楽しみですねー、お風呂」

「風呂限定かよ!」


 この人絶対修学旅行生みたいに『のぞきしましょうよ! N・O・Z・O・K・I!』とか言い出すだろうな。

 最年長にして心は師匠よりも若々しいのかもしれない。そんな事を考えていると朝早起きしたせいか睡魔が襲いまぶたがいつのまにやら閉じてしまっていた。



「神哉、起きろ! 着いたぞ!!」

「...............あー......、......そう」

「寝起き悪っwww」


 うーん、意識したことはなかったが、確かに俺寝起き良いとは言えないな。眠い目を擦りながら窓の外を見てみる。

 すると、そこには!


「...おー、滑走路、か...」

「当たり前でしょ。いきなり『大分だ!!!』ってならないわよ」


 まぁ、そりゃそうだ。寝る前まではワクワクしてたのに寝起き悪いって損だなー。

もっと寝ていたい。


「ほれ、彼杵、イクミ起きんか。着いたぞ」

「むにゃぁ、もう着いてしまいましたか...」

「ハッ! ワタシとしたことが御主人様の膝枕を忘れ、自分が眠ってしまうナンテ! この罰、何なりト!」

「ん~じゃ、眠そうな彼杵ちゃんおんぶしてあげてwwww」

「ワカリマシタ!」


 彼杵は寝ぼけたままイクミにおぶわれ飛行機を出て行く。それに続くサヤ姉、師匠、カズ。

 俺も重い腰を持ち上げ、荷物を背負って皆を追う。

 ......あれ?

 平戸さん、イクミ、彼杵、師匠、サヤ姉、カズ、そして俺。

 何か忘れているような......。ま、気のせいだとしよう。俺が、というか俺たちがこの旅行の主催者がいないことに気付くのは、もっと先のことだった。


 次は犯罪者たちがあの有名な大分別府温泉の、杉○井ホテルにお泊りだ!!

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