No.18 違法弁護士は見る目がある?
前回! ついに訴えられた女の敵、佐世保和人。
何としても裁判で勝つために最強弁護士に依頼することを決める。 しかし、その弁護士は勝つためならば何でもする違法弁護士。果たして和人は裁判に勝ち自由を手にすることができるのか!?
必見でありますぅぅ〜〜!
......俺のキャラ、ブレブレだな。
負けなし、だが違法なこともする弁護士。カズはそいつに自分の弁護を依頼することに決めた。そして俺とカズ、彼杵、春昌さんの四人でその男がいるという事務所へと向かっていた。
「下着ドロボー、まだ着かないんですかー?」
「ちょっとちょっと彼杵さん! 外でまでその呼び方ヤメテぇ!」
相変わらず彼杵の春昌さんへの当たりがきつい。
「ほら、あそこですよ。あのビル」
春昌さんは立ち止まり指をさした。
その指先を見てみるとそこは、
「違法カジノがあるビルじゃねえか......」
そこは以前、俺がスパイに間違われ侵入した例の違法カジノがあるビルだった。
「は、春昌さん。ホントにここに事務所があるんすか?」
「えぇ。このビルの確か......三十四階だったはずですよ?」
「どうしたんですか、神哉くん。汗ビッショリだよ?」
「あぁ悪い。少し嫌な思い出がな......」
どうやら皆このビルの最上階に違法カジノがあることは知らないようだ。
まぁ知らぬが仏だ。黙っておこう。
「じゃ、行きましょうか」
そう言って春昌さんがビルの中へと入っていった。それに続いてカズ、彼杵の順でついて行く。
ヤダナーコノビル......。
そんな思いが一番にあったが渋々ついて行くことにした。
「すいません。松浦法律事務所は三十四階ですよね?」
春昌さんがロビーの受付のオネェさんに確認をとる。
「はい。そちらのエレベーターからお上がりください」
俺たちはオネェさんの手で指したほうにあるエレベーターに乗り込み、三十四のボタンを押す。
エレベーターは徐々にスピードを上げてぐんぐん登っていく。
「うわっ。このエレベーターすっごい速い」
「確かに速いな。一秒に軽く三階は登ってるぞ」
高性能なエレベーターは程なくして三十四階に着いた。
チン!
と音がしてドアが開く。
その途端に、
「だぁかぁらぁ! 先生は仕事を選びすぎなんです!」
「うるさいわ! 私の仕事のやり方は一回で大金が入るんだ! だから当分仕事はしなくていい!」
「でも仕事しなさ過ぎです! もう三ヶ月は何もしてないでしょ!?」
男と女の怒号が事務所内に響き渡っていた。
「あの〜すみませーん。松浦法律事務所はこちらでよろしいですか?」
春昌さんが恐る恐る声をかける。
すると、
「はっ! スイマセーン。ようこそ! 松浦法律事務所へ!」
そう言ってパッと不機嫌そうだった顔を、一瞬で営業スマイルに変えて一人の女がこっちに来た。
というか法律事務所にようこそって歓迎されても嬉しい奴いないだろ。
「私、ここ松浦法律事務所の
綺麗な姿勢でお辞儀して名刺を渡す女乃都マヤ。
正直いらない情報もあったが、結婚願望が強そうな感じだ。
「女乃都ぉ〜。君はそうやってすぐに結婚したいアピールをするから男に逃げられるのだよ。もう少し謙虚に生きるべきだ」
奥の方からゆっくりと歩いてきたのは、真っ赤なスーツにオールバックの髪型をした見た限りでは頭のおかしい派手な男。
「先生余計なこと言わないでください!ほら、早く名刺渡して」
「私は名刺は持たない主義だ。いつも言っているだろう?個人情報をそんなホイホイと他人に渡すなんて私には出来な、」
「このクズ男が事務所の設立者、
松浦の言葉を遮って女乃都が代わりに名刺を渡した。しかし今この人上司のことクズって言ってたけどいいのかよ。
「女乃都ぉ〜。今私のことをクズと言ったなぁ!? クビにするぞ!」
「クビにして困るのは先生の方でしょうが! 私がいなくなったら、なんの案件もこないですよ!?」
「それもそうだろう。お前がいつも持ってくる案件は全て、庶民のアホな面倒ごとだからな。私はもっと上流階級のアホどもの面倒ごとを受けるんだよ。その方が儲かるだろう?」
たった数分。会話もせずに見ているだけで、この松浦綾平が相当なクズであることが分かってしまった。
「なるほど。結婚詐欺師と間違われて訴えられてしまったと......」
「はい。そうなんですよ。まぁ正確にはまだ訴えられてはいないんですがね」
カズはもちろん自分が結婚詐欺師であることを黙って、結婚詐欺だと疑われたと話をした。
女乃都は少しも疑うそぶりを見せずにカズの話を信じたようだ。うんうんと深く頷いている。
が、問題はもう一人の方だった。
偉そうにソファにふんぞり返ってつまらなそうにしている松浦。俺の危険センサーが何かを察知している。こいつ、ただテキトーに話を聞いているようにも見えるがどうも違うようだ。
「ですってよ先生! この案件は骨がありそうですね!」
女乃都が今にも眠ってしまいそうな横の松浦をゆさゆさ揺らす。
「はぁ~。全くお前の目と耳は本当に使い物にならないな」
「は? どうゆうことですか」
「女乃都ぉ~。お前はいつになったら人を疑うことを覚えるんだ」
やれやれと手を上げて首を振る松浦。女乃都はそれを不満そうに睨む。
「こいつは本当に結婚詐欺やったんだよ」
「!!!」
なあにいいいい!!!
カズが結婚詐欺師だとバレてる!?
何故だ。何故分かったんだ?
「ちょ! 先生それは失礼ですよ。そんな確証はどこにもないでしょう? それなのに結婚詐欺師だと断定するなんて失礼です!」
「あーあーあーあー! ほんっとお前は使えないなぁ! いいか女乃都? これまでに私が本物の犯罪者を見抜けなかったことがあるか?」
「そ、それは、ないですけど」
ないの!? 犯罪者かどうかを見極めることができる弁護士とは。
松浦綾平......、完全にあなどっていたぜ。
「もっと言うならここにいる全員が犯罪者だぞ。そこの二人は窃盗罪、あとネット詐欺師ってところか?」
やべぇ、俺たちまで見破られている。
「そんな......、こんな良い人そうな方々が」
「そうやって相槌打って人の話全部鵜呑みにしているから結婚も裁判も勝てないんだこの無能が!」
「まあまあ、そこまで言わなくても」
春昌さんが仲裁に入った。さすがに見ていられなかったようだ。松浦はフッと鼻で笑い再びソファにどっかりと腰掛ける。
「残念だが私はこの案件は受けない。犯罪者だと分かっていて弁護しても勝てはしない。それに金もそんなに出せないだろう? 安心したまえ警察には通報しないから」
残念だとか言っているが全然残念そうに見えない。めっちゃ笑顔。早く追い払いたい感がすごい出てる。
「待てよ、金さえ出せばあんた働いてくれるんだろ? あんたは勝つためなら犯罪でもするって聞いたぜ」
カズが立ち上がって言った。
「まぁ、今回の案件で私を動かすならば、相当な金がいるぞ?」
「俺はこんなとこで捕まっちまうわけにはいかねぇんだよ。あんたの望む金額を言いな」
マジかよお前。この男にそんなこと言ったら相当金持っていかれるぞ。
「フッフッフッ。私の依頼料は五千万。さらに成功報酬として二千万。加えて私なら逆に相手から賠償金も取ることができるだろう。その賠償金の半分だ。それで動こうじゃないか」
「ちょっと先生! それはいくらなんでも取り過ぎですよ!」
女乃都が松浦とカズの間に割り込み話を止める。
確かに賠償金が幾らになるかは分からないが、今分かっている金額でも七千万。普通にぼったくりじゃないか?
彼杵もその金額に口を開けて呆然としている。
「それで勝てるんだな?」
「確証はない。......だが、私は違法だろうがなんだろうが勝つためならなんでもする。その辺の正攻法で戦うような一般的な弁護士に依頼するよりは勝てる確率は格段に上がるだろうな」
「......よし、契約成立だ」
そう言って松浦とカズはがっしり握手した。
果たして違法弁護士松浦はどんな手を使うのか。見ものだ。
次は違法弁護士の本領発揮のようです。
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