No.5 ハッカーとサイコパスは気が合う?
前回のあらすじ!!!
東彼杵の誕生日プレゼントとして世間で噂の怪盗Hに合わせてあげようと奮闘する高天原神哉。佐世保和人と諫早沙耶も連れて、師匠の五島椿の元へ。はたして犯罪者たちは怪盗Hに会えるのか!?
さらに神哉と喧嘩? している平戸凶壱はいったいどこへ消えたのか。
謎が謎を呼ぶ至高の冒険ファンタジーが今、開幕!!!
......すいません。前半は本当のことだけど後半は全くの嘘です。ちょっと言ってみたかっただけ。
「ァァァァアン! キモチい良いよぉぉ!」
警察のデータベースに侵入する、というそれなりに大きい仕事をもらった俺の師匠、五島椿。ハッキングを開始してから五分ほどでさっそく喘ぎだし、かれこれ二十分ぐらいこんな感じだ。ハッキングの腕は確かなのだが、ハッキングすることに快楽、快感を覚えてらっしゃる十四歳女子の師匠。
「ツバキちゃん、ツバキちゃん。好きなものとか欲しいものはあるかい? お兄さんが買ってあげるよ」
「おいカズ。師匠に手ぇ出すな」
こいつこそロリコンじゃねぇか。
「いいじゃんかよー。結婚詐欺じゃこんなに若い子と関わることないんだよ。可愛らしいなぁツバキちゃん」
若いっていうか十四歳って結婚できねぇからな。ターゲットにすることもないんだろう。
「緑ナルシー、マジキモいです。ただのロリコンじゃないですか」
彼杵が本気で引いてるようだ。
カズどんどん女性陣から距離とられていってんだけど。
しかし緑ナルシーってひどいあだ名だな。色のところはカズはよく髪染めるからいつも変わるんだろうけど。
てか、ロリコンっていうよりは初孫を可愛がる爺じいさんって感じ。
「お前さ、サヤ姉のこと何とかしろよ。お前の一言でトドメ刺したようなモンだぞ」
サヤ姉は師匠に個人情報をいろいろと見られて傷心中である。
さっきまで泣いてたけど今は泣きやんで床のタコ足配線をうじうじいじっている。
時おり『なんでいつもあたしだけひどい目に遭わされるのぉ……』とか聞こえるけど知らんぷり知らんぷり。
この人に同情したら負け的な流れが俺たちの中で出来上がってしまってる。
話は変わるが今、警察のデータベースに侵入してなにをしているのかというと、彼杵の誕生日プレゼントのためだ。彼杵が尊敬する人、怪盗Hに会うためにどこの美術館かあやふやなのでハッキングで調べているところだ。
「師匠どうすか? 分かりました?」
「どこの美術館かなんてぇ...最初の五分くらいで分かったよぉぉ」
「マジですか!? さすが師匠! ってそれより俺の指をくわえて舐めるのヤメテ!」
さすがだなとか思ったのになんか急に舐めだしたんだけど。
「ハッキングを始めて五分で警察から情報を盗んだんですか!? それってすごいことですよね」
「じゃあさっきからツバキちゃん何をしてるの? ハッキングし終わったらもう快感はなくなるんじゃないのか?」
カズが俺に訊いてきた。
「師匠の腕なら侵入するのなんて一瞬だ。ただ今回のハッキング先は警察。おそらくサイバー犯罪対策課とやらが逆にこっちをハッキングして、居場所を突き止めようとしてんだよ」
「はぁ!? それやばくねぇか。バレたら一巻の終わりじゃん」
「大丈夫だって。師匠最強だから」
「理由になってないんですけど......」
うん、俺も言った後に気づいたよ。
でもホントだから。マジでただアンアン喘いでるだけの人じゃないから。
「アハァァァァン♡カタいいん! 熱いのがっ、ンッ、流れこんでくりゅぅぅ♡♡♡」
「これホントに大丈夫か」
さすがのカズも心配のようだ。
すると彼杵が、
「カタいって、なんのこと言ってるんですか?」
「なんだわかんねぇのか? 訳するならば、相手の警察のパソコン的なブロックがカタいってことだ」
「じゃあ、ながれこんでくりゅぅってのは?」
今度はカズが訊いてきた。
「そりゃぁもちろん、相手のハッキングがこっちのパソコンに侵入されてるってことだ」
「............それやばいんじゃないの?」
サヤ姉がこちらを向いてボソッと呟いた。
えーーっと。うん。俺も言ってるうちに気づいてきてたんだけど。
「ちょいちょいちょい!! 師匠それ逆探知されてますよね!?」
「ふぇぇ?」
「ふぇぇ? じゃないっすよーー!! 警察に居場所がバレてるんじゃ!?」
いきなり叫びだして変なやつだみたいな顔で師匠が言った。
「らいじょうぶ、らいじょーぶ。まだこっちのめいんこんぴゅーたーまでは侵入されてにゃいから」
「メインコンピューターしか残ってないじゃん」
カズが笑った。
いや笑ってる場合じゃないから。これ非常事態だから。
「ちょっとツバキちゃん。頑張ってよ? 警察に見つかってブタ箱行きはヤダよー」
彼杵も事の重大さを理解しているのか師匠を励まし始めた。
しかし、師匠のタイピングスピードはどんどん落ちていく。
いや、堕ちていくといった方が正しいかもしれない。
「しゅごいぃぃ! 攻められるのってしゃいこぉぉぉ♡」
「神哉くんヤバイ! ツバキちゃんがなんか新しい快感をおぼえてるんですけど!」
「マズイぞ! 師匠がめったに責められることなんてないから新たな性癖に目覚めたんだ! サヤ姉のようなドMに!!」
後ろから『ぐはっ。』って声が聞こえたけど傷をえぐっちゃったかな?
「ハぁぁぁぁ~ンンっ♡もうらめ......」
ぐったりと倒れこむ師匠。
「起きて起きてツバキちゃん!神哉くんどうしよ。気絶しちゃってる。......アヘ顔で」
わーーわーー!
モザイク処理しないと♡って言ってる場合じゃない!
「逃げよう神哉くん!」
「さっさとしないと最近のサツは速いぞー」
「ダメだ。師匠を置いていけない!」
「だから連れて行こうよ」
「無理だ、パソコンいじってないとこの人死んじゃうから」
「じゃあ、スマホでネット使わせれば」
「だとしても!......アルビノだから日光に当てると危険だし」
「過保護すぎ!!」
彼杵に怒られちった。テヘッ。いや今はふざけてる余裕無いな。
でも俺不思議と落ち着いてる。
あ、そっか。前にもおんなじような事あったな、架空請求業者だったときに。
でもこの話をするのは今度にしよう。長くなるからな。
「よし、後の対処は任せろ。お前らはすぐにもと来た道を真反対方向に進め。別の通りに抜けられる」
「神哉くんは来ないの?」
彼杵が俺の手を握って、一緒に連れて行こうとする。
「俺はここから一切の証拠、形跡を消してから行く。俺ん家で待ってろ」
彼杵が心配そうに見つめてくる。
可愛い奴だ。ポンポンと頭を撫でてようかと思ったが照れの感情が強く、ついワシャワシャと撫でてしまった。
それでも彼杵は嬉しそうに目を細めて笑うと、
「絶対帰って来てね!」
そう言って師匠をおんぶして部屋から出て行った。
「捕まんなよ。この業界は捕まったやつに情けはないからな」
カズが珍しく真顔で俺に忠告する。
でも、髪が緑なんだよなー。おちゃらけ大学生にしか見えねぇ。
「ほら行くぞ」
いまだ床に膝を抱えてしょぼくれているサヤ姉を軽く叩いて引っ張っていく。
残った俺はさっそく対処に移る。一度経験したことがあるだけに手際よく作業は進んだ。が、パトカーのサイレンが遠くで聞こえきた。
そしてすぐにこの店の前にまでやってきてドアを壊そうとしてくる。あの時が俺の人生で一番の心拍数を誇ったんじゃないだろうか。
ドぉぉン!!
ドアが蹴破られ、警察は銃を構えて入ってくる。
「サイバー犯罪対策課だ! 手を上げろ!!」
「神哉くんが帰ってこない!!!」
私が今日八回目の叫びを上げた。
「もう分かったって。落ち着きなよ彼杵ちゃん」
のんきにあくびしながら平戸凶壱先輩が言った。
「だってもう二日も経ってるんですよ!」
「心配しすぎだ彼杵よ。愛しておる男をもっと信頼してやらんか」
淫乱JC十四歳に窘められてしまった。
「でもさすがに二日は心配ですよぉ~」
二日前、私とツバキちゃん、ナルシー、サヤ姉で神哉くんを置いてあそこから逃げた。 途中パトカーが何台か通っていったのを見てずっと心配なんだよなー。
「まったく、彼杵ちゃん帰って来たときは、
『神哉くんホントカッコいいぃ! もう大好き♡』
『頭ワシャワシャ撫でてきたんですよ~。照れ隠しに強がってましたけど、そんなところがまたカワイイ......』って馬鹿みたいにのろけてたじゃん。彼杵ちゃんもこんなのろけるんだなーって思って驚いたよww」
バカみたいって......。相変わらず失礼な人だ!
てゆーか私的には凶壱先輩が普通に神哉くんの家にいたことがすごく驚きだったんですけど。
今この部屋には私を含めて三人。ツバキちゃんと凶壱先輩。
ナルシーはどっか行っててサヤ姉はお仕事だと思う。
「しっかしツバキちゃん、パソコンばっかりいじってるけど、そんなやることある?」
神哉くんのパソコンを、ここに来てから延々と使っているツバキちゃんに凶壱先輩が問う。
「もちろんだぞ凶壱。ハッキングはもちろんア○ゾンで買い物したりユー○ューブ見たり飽きんぞ~。ネットの世界というのは」
この二人ホントに初対面って思うほどすぐに打ち解けた。
きっとどっちも常識がないからなんだろーなー。
「僕も神哉くんとは喧嘩しちゃったというか僕が一方的に殴られたんだけど、仲直りしてないからなぁ」
「神哉が殴る!? 珍しいな。いつものんびり温厚な性格だと思っていたが」
凶壱先輩と神哉くんが喧嘩。
神哉くんが殴るほど怒るなんて凶壱先輩何を言ったんだろ。
「そのことについては...ホント......申し訳ないっす。平戸さん」
全員が声のしたリビング入り口を振り向く。
「神哉くん!!」
そこに立っていたのはまぎれもなく神哉くんだった。
私が飛びつくとフラフラしながらその場に座り込んだ。
「大丈夫かい? 神哉くんww。だいぶフラフラしてるけど」
「ちょっと逃げ回ってたんでね。最近のサツはいい仕事しますよ」
二日間逃げ回ってたみたいだ。きつそう......。
「お疲れであったぞ神哉。それで、我の店はどうなった?」
「すんません。全部、壊してきました」
破壊してきた? どーゆーことだろ。
あそこにあったパソコン全部壊したってこと?
証拠を無くすってそーゆーことだったんだ。
「そうか......。まぁ仕方なかろう」
ツバキちゃんは少し悲しい顔をしたが、すぐにニヤリと笑って、
「弁償として我に二台はアイマックを買ってもらうからな」
「うす」
やっぱりこの二人は知り合ってからの年数が違う。
仲いいなーとか思って見てると凶壱先輩が、
「彼杵ちゃん嫉妬してるね~? 自信なくしちゃった? 知り合ったのが自分よりも前のツバキちゃんの方が、神哉くんとお似合いなんじゃないかって思ってるんだろうww?」
なんて勘が鋭い人。
確かに思ってたは思ってたけど、言い方がイチイチ感に触る!
「し、嫉妬なんてしてませんし。神哉くんと結婚するのはこの私ですから」
「神哉くんもそうだったけど、君たちはどうしてそんなに前向きに考えることができるんだいww? 未来なんて誰にも分からないさ。それなのに君は結婚できると考えている。神哉くんの気持ちも考えずに」
何でこの人はこういうムカつく言い回しが得意なんだろう。
さすがはサイコパス。
「神哉くんの気持ちは考えてます! まだ私のことをそうゆー目で見てない事だって分かってます! だからたくさんアプローチして、スキンシップをとって......」
言ってるうちに自分でもよく分からなくなってきた。
「君の言い方だとまるで肉体を捧げれば神哉くんも振り向いてくれる。みたいに聞こえるなぁw。神哉くんとの間に子供を作っちゃえば優しい神哉くんは結婚してくれるってことかい? 君も悪い女だねぇ~www」
パチンッ!!
私の平手打ちが綺麗に凶壱先輩の頬に入った。
小声で話していたから気づかれなかったが、平手打ちの音で神哉くんもツバキちゃんもこっちに気づいた。
「おい。どうした彼杵。何で泣いてんだ?」
「ぇ?」
自分の頬に手を触れてみる。ホントだ。頬をツーと流れる水滴が一筋。
なんで気がつかなかったのかな?
「あ、いや、その。ごめんなんでもない!」
「なんでもなくはなかろう。女優でも目指してない限りいきなり泣きはせんぞ」
凶壱先輩は顔を叩かれてもなおニヤニヤしている。
この状況を楽しんでる感じ。怖い......。
「平戸さん! あんた彼杵になんか言ったのか!?」
「なんでも僕のせいにするなよ~。まぁあながち間違ってはないんだけどw」
「やっぱりなんか言ったんだろ」
神哉くんが少し怒ってる?
私のために怒ってくれるなんて嬉しいな。でもこの胸のモヤモヤは何。
凶壱先輩と話すとこうだ。人間の、自分でも分かっていない心の奥の想いが考えが、あの人に見透かされたような気分。
「というか、君たち二人見ただろ? 僕が何か言ったとしても僕は平手打ちを食らってるんだよ。僕は被害者だよwww」
凶壱先輩が言い終わった瞬間。
バキッッ!!
神哉くんが凶壱先輩を殴った。初めてこんな神哉くんが怒るの見た。
「平戸さん、前殴ったのも彼杵のことでしたよね」
「!?」
驚いた。
怒った内容については知らないけど前に凶壱先輩を殴った理由が私だったなんて。
「確かに俺は、彼杵のスキンシップでムラムラすることもあったし、彼杵から好きだって告白されてんのにあやふやに返事してうやむやにしてました」
神哉くんはいつになくまじめな顔で凶壱先輩を見てる。
「だからこの前平戸さんに言われたときに殴ちゃってマジで悪かったなって反省してたんすよ。でも! 彼杵を泣かすようなことしたら俺許しませんから」
かっこいいいいいいいいいいい!!!!
もうこの一言に限る!
「それにずっと好きって言われ続けてきて、俺も答えを出しました!」
神哉くんが顔を真っ赤にしながら手を腰に当て、仁王立ちで叫んだ。答えを出したっていうのは、私の告白に対してってこと? ツバキちゃんもほぉぉって言いながらニヤニヤしてる。
「お、俺は! 彼杵が好きだ!!!」
「!!!」
「ゆ、友人として......」
がくっと肩を落とすツバキちゃんが、
「まったく。相変わらずヘタレだのぉ神哉よ」
友人として好き。友達として......。
「いいんです! いいんです!!! 私嬉しいです。神哉くんが友達としてでも好きだって言ってくれて」
ホントは一人の女としてが良かったけど。
それでも!
「私これからも神哉くんが私と結婚したくなるまで頑張るから! 覚悟してね?」
視点は変わって、どうも高天原神哉だよ。ニコッ。
ホントは俺の二日間にわたる逃亡劇を話そうかとも思ったが、まあやめといた。
しっかしなぁ、やっぱし俺へタレのまんまなんだよなー。
ホントは普通に告白する気だったんだよ。でも、つい友人としてとか言っちゃった。どうしたもんかなー。
というのも前平戸さんを殴ったときに言われたこと。よく考えてみたらなんか自分でも気持ちが分からなくなっちまったんだ。
昔から女の子と話すのも苦手で目もあわせられないくらいだった。
彼女できたこともない俺は恋をしたこともない。
だから恋ってものがどういう感情なのかマジで分からなかった。
情けない話だけど平戸さんの言ってたことの真逆の考えで思考をめぐらしてみた。
好きっていうのは一緒にいて楽しい、一緒にいたいってことなんだって。
うわ、我ながらキモい。こんなこと考えるようになるとは俺も落ちたな。そんな浮かれたことを考えているときだった。
「なぁお前たち? 忘れているようだが、彼杵の誕生日に怪盗Hに会いに行くんじゃないのか?」
椿師匠の一言により一瞬で現実に戻された。
「あ、そーだった」
「なになに!? 僕その話聞いてなーーい」
「そうですよ! 神哉くん、三日後が怪盗Hが予告した日ですよ!」
なぬぬ、それはマズイな。
いろいろ作戦も立てねばいけないのに。
「というかまず、師匠。ハッキングでどこの美術館か調べたんすよね? 教えてください」
そもそも師匠に会いに行ったのはハッキングで怪盗Hの狙う美術館を調べてもらうためだった。
「うむ、それがな美術館じゃなくて博物館だったんだよ。この街にある歴史文化博物館だ」
次こそは犯罪者たちが怪盗Hに会いに行きます。
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