どうもみなさん、ハンバーグ寿司です

緑黄色野菜

本編

 私にも夢がありました。高級レストランで振舞われるステーキだったり、忙しいサラリーマンのための牛丼だったりね。


 夢見がちな肉の妖精だった私にもミート国王から指令書が来るわけですよ。その指令書が入った封筒をワクワクしながら封を切りましたよ。


 「貴殿に回転寿司店のハンバーグ寿司の任を与える」


 えっ、嘘でしょ?ハンバーグ寿司?私の質ならすき焼き用お肉もいけるんじゃないかと思っていたので内心ショックでした。ハンバーグ自体は名誉なことです。お子様に長年愛される料理で不満はありません。でも、寿司にする必要はないと思うですよ。

 案の定、職場はフィッシュ王国から来たお魚さん達しかいなくて、完全にアフェイでした。


 「なんで、あいつ寿司屋にいるの?」


 と真面目なトーンで話しているところを待機中に聞いてしまって辛いんですよ。私とコンビのシャリさんも冷たくて完全に仲間がいません。


 そこで先輩の冷凍ハンバーグ先輩に相談しました。


 「先輩。私、この仕事向いてないかもしれません」

 「弱気になるな。お前は今は寿司という扱いだが、心はハンバーグだ。子どもから大人まで愛される食べ物としての誇りを持て」


 私は先輩の言葉を胸にレーンに飛び乗りました。今までに感じたことない清々しい気持ちで見る店内はいつもと雰囲気が違うように感じました。

 しばらくすると、お子様が私のことに気付いたようで小さな手が見えた時に思いました。あぁ、報われたのだと。しかし、その子のお母様の手が遮ってきました。


 「せっかく、お寿司屋さんに来たんだから、ちゃんとしたお寿司を食べなさい」

 「は~い」


 ここで今まで貯めていた涙が一気にあふれ出しました。


 『ちゃんとしたお寿司』


 この言葉の意味に泣き続けながら、気付けば私は破棄直前の最後のレーンを進んでいきました。

 駄目だと腹を括った瞬間、一人の男性が私を掴むと口に運びました。


 「回転寿司は、気取らずに好きなものが食べられるから素晴らしい」


 

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