雪空の一筋の光
結局私は妻を理解することができなかった。
同時に私は彼女を幸せにすることはできなかったということだ。
離婚の手続きは淡々と進められた。長年連れ添った彼女の事を思うと尋常ではいられなかったが、その反面幾度も繰り返された争いが、一先ず終止符をうてる安堵もあった。
彼女の事は今でも嫌いではないが、恋愛感はもはやない。憎しみや、怒りで別れたのならどんなに楽かと思うが、今の純粋たる気持ちは、結局僕達はお互い求めるものが違い過ぎたという思いだ。
夜勤明けの帰り道。
今朝の景色は少し幻想的だった。
雪が散らつくなか、
近隣の山々の間から昇る太陽が妙に神々しく
一筋の光に心打たれる。
寒さのせいか赤らんだ寝不足の目から何度も涙が流れていた。
お互いの為にはきっとこれで良かったのだ。
宮下奈都の「太陽のパスタと豆のスープ」の中で、主人公の女の子は、結婚直前の彼に別れを告げられ立ち直っていくわけだか、そのなかで別れを告げた彼の気持ちを思うシーンがある。
彼は彼女を思う気持ちが薄れたままで、結婚するくらいなら、どこかで別れを告げた方が良いと感じたのだろうと、主人公は悟るシーンだ。(たしかそんな感じだったと思う。)
きっと悲しくない別れ等ない。
過ごした時間がながければ長いほどだ。
でも前に進む為の別れもきっとあるはず。
だからゆっくりでも良い。
立ち止まらずに進みたい、
雪空からでもさす一筋の光があるのならば。
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