プロローグ
「……もう少しだ。」
光が、自分を包み込んでいる。
光は、自分の進行方向に筒状に伸びていき、まるで光のトンネルの中を、高速で移動している感覚だ。
もう、どれくらいの時間を、そうしていたかわからない、
が、ついに光が途切れている場所から、緑や茶色、水色に光る点が見え始めた。
点は、自分が進むにつれて大きくなり、やがてそれらの色の正体が、木や、土、川であることが分かるようになってきた。
そこでようやくこの退屈な移動が終わりを告げようとしていることを理解する。
……この光から抜ければ、自分が目指す世界に到着するということだ。
「もう少し、もう少しで答えが分かる……。」
次第に近づいてくる、トンネルの終わりを見ながら一人つぶやく、元、全ての支配者、
そして–––––
–––––創造神カオス、
全てを創り出すことができる、まさしく全知全能の神、
だったのだが……、
––––––ある時ふと思った。
何でも創り出せるし、何でもできる。……これはなんて退屈なんだ。
……と、
そして、
『全知全能が退屈ならば、そうでなければ、もしかすると退屈ではないのかも知れない。』
そう思い至った創造神は、ある世界を創り出した。
……それは、不完全な世界、
できることには限界があるし、できないことすらある、全知全能の創造神からすれば、到底理解できないし、しようとも思わなかった世界。
そして、同時にその世界を三つに分け、様々なパターンを試し、自分はどのように変化すればこの退屈から脱することができるのか、調べることにした。
三つの世界には、自分の心、体を、それぞれ模した生き物を、何種類か創り出した。
一つ目は、獣や、虫や、植物など、人外の生き物をグチャグチャにまぜたような見た目の、自分の変化する心の形を具現化させたような種族、
この種族には、自分の力を何割か、当分に分けて持たせた。
それらは、生き物達に宿ると同時に、魔力となり、他の種族に比べて物理的に優位となった。
が、心を持たせなかったため、知性が生まれず、自分達が強いことにすら気づかなかった。
……結論は、退屈だ。
二つ目は、美しい翼や、角の生えた人間の姿をした、自分の不変の見た目を模した、形だけを見れば自分に最も近しい姿をした種族、
この種族には、自分の知識の何割かを当分に分けて持たせた。
それにより、その生き物達には、知性が宿り、心が生また。
が、力を持たせなっかったため、他の生き物達に比べ、はるかに賢くなり、自分達は何をするべきかを考えつくに至ったが、それを実行することができなかった。
……結論は退屈だ。
そして三つ目は、見た目こそ自分に近いが、角や翼はなく、
中身は、自分の心を模し、変化を持つが、それをうまくコントロールできない、非常に不安定な種族、
……もう見ただけで退屈そうだ、と思ったが、可能性の一つなため、仕方なく創った。
「まぁ、これが自分の求める答えを出すとは思えないが、仕方ないし……」
適当に流すか……
と、完全にナメていた創造神だった。
……のだが、
……どういうわけか、何もしない他の種族に比べ、三つ目の種族だけが何か行動を始めた。
しかも、それらの行動をしている種族は、どうも退屈ではなさそうなのだ。
……つまりは何かしら行動をすれば退屈ではない、ということなのだろうか?
「……予想外だったが、あの種族、よくやった。」
なるほど、確かに、自分は何も行動しなくてもやろうと思ったことは、考えた時点で実現していた。
自分に足りないものは、行動だったか、
そこで、創造神は、自分の完全性を捨て、考えて、行動しなくては物事が実現しないようにした。
次に彼らがしていることは何だ……
さっきまで完全に興味がなかったのに、今や釘付け状態の創造神、
「……ふむふむ、これは……何か話しをしているのか?」
……話しをする。
それは他者と関わること、
つまりは今までずっと一人でいた創造神にはできなかったこと、
……他者と関わることが、退屈から抜け出す方法なのか?
「……もっと、詳しく知りたい……」
……ならば、彼らにはもっと関わりに行ってもらわねば、
「せっかくだから他の種族も使うか……」
もしかしたら、他の種族にも変化が出るかもしれないし、三つ目の種族にはもっといい変化が出るかもしれない。
そうして、三つの種族を別々に考えていた創造神は、さらなる良い結果を求め、三つの種族を関わらせることにした。
……自然に互いに関わり合い、行動をするようになるためには……
色々考えた結果、
まずは、全ての種族に、他の種族と関わることで、”成長する”という力を付け加えた。
次に、
”成長したい”と思わせるため、本能に”自分に足りない力が欲しい”思うことを付け加えた。
それにより、全ての種族達は、自分達に足りない力が欲しいと感じるようになり、力を得るためには他の種族と関わることが必要だと学べば、あとは勝手に関わりに行って、勝手に成長してくれる……。
「さぁ、分身達、答えを出してくれ、……不完全な存在なら、この退屈は無くなるのか?」
……なんだろうこの感覚、もしかすると、このまま退屈から一気に抜け出せるのではないか?
期待に満ちた、創造神の見つめる先で、その世界に生きる、様々な種族が邂逅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます