シェアード・ワールド
ベームズ
こんな設定、
創造神カオスは退屈していた。
全てを作ることができ、できないことがないことに、
そこでカオスは、三つの不完全な世界と、そこに生きる不完全な種族を創り出した。
不完全な生き物なら退屈ではないのか?という疑問が生まれたから。
三つの世界には、それぞれ、
力はあるが、それを使うことで何が出来るかを理解出来ない、野生動物のような種族と、
知性があり、何でも考えつくことにはできるが、それを実現できる力がない、非力な種族と、
微弱ながらも、力と知性のどちらもあり、考えつくことにも、できることにも限界があるが、とりあえずは力の使い方を理解でき、それをとりあえずは実現できる、微妙な種族が存在していた。
そして、創造神は、三つの世界の全ての種族に、どのような形であれ、他の種族と関わることによって、完全である自分へ向けて”成長する”という力を与え、
同時に”完全を目指したい”という本能を持たせることにより、自然と全ての種族が引かれ合うようにした。
そうして、後は彼等が答えを出してくれると、しばらく観察していた創造神カオスだったが、
ある致命的なミスに気づく。
知性がないせいで、他の種族がいること自体知らないし、無関心な魔界、
他の種族がいること自体は知っていたし、他の種族にあるものを欲しいとさえ思うに至ったが、何かをする力がないせいで何もできない天界、
そんな中、どちらも持つ、地上界だけが、
力でかなわぬ相手には知恵を、知恵でかなわぬ相手には力を、それぞれ使い、魔界と天界の両方を一方的に侵略し始めたのだ。
……完全を目指して、
このままでは魔界も天界も、地上界に滅ぼされてしまう。
……バランスを間違えたかな?
そう悟った創造神は、地上界以外の世界にそれぞれ一人だけ、力と知性をどちらも持つ、長となりうる存在を作り出そうと考えた。
そうすることで、三つの世界がバランスを取れると考え、
地上界には、もう皇帝なる長が存在したので、その皇帝に、他の種族の長となる存在と同じだけの力を与えた。
こうして、魔界には魔王が、天界には女神が生まれた。
そして何が起きるか観察することしばらく、
今度は創造神は何もしていないのに勝手に変化が起きた。
–––––––戦争が、始まった。
他の種族と関わるというのは、互いに手を取り合い助け合う、という意味のつもりだった創造神だが、
他の種族と戦い、倒すことで、自分達に足りない力が備わっていくと学んだ全ての種族が、力の奪い合いの戦争を始めたようだ。
どうやら何が何でも戦いたいらしい……
だが、それは自分の想像していた形ではない。
自分が創り出した世界のルールに従えば、別に相手を倒さなくても、話すだけでも、触れるだけでも力は手に入るのに、
つまりは、犠牲など無くとも、やがては全ての種族が等しく完全になれるはずなのだ。
……なのに何故、わざわざ血を流す?
疑問に思い、どうやって止めようかと考えた創造神だったが、
そこで創造神は気づく、
……互いの力を欲し、奪い合う者達の姿は、間違いなく、退屈はしていないと……
カオスはそこで結論を出した。
やはり不完全なら、この退屈は感じないということになると……
……ならば自分も不完全となろう、そして彼等と同じく、足りない力を求める戦いをしよう。
そうすることで、この疑問に対する答えも出るだろう?と……
そして、創造神は、自らの力を、不完全なものにし、自分が創り出した世界を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます