銀貨

 昔あるところに呪われた銀貨があるといわれた。

―その銀貨を見たものは呪われ、異形の力を手に入れる。

 カイは剣士だった。誰もがなれるわけではなく、この国の花形の職業で、毎回剣士たちには掛け金がかけられる。

 スーパースターではないが、中堅のそして若手有望株だった。

 試合はライトセーバーを用いて行う。

 持ちてから伸びるライトで相手を倒すと相手が気絶する。

 ある日街中で奇妙な古書を見つけた。

 読んでみるとそこに一枚の地図が挟んであった。

 カイはそこへ向かうと滅びた民家だった。

 民家の庭を地図の印を目当てに探してみるとそこに鉄の箱があった。

 鉄の箱には鍵がかかっていた。

 カイは古書をぱらぱらめくった。

 そして背表紙の裏に鍵がめりこんでいるのを見つけた。

 カイが箱を開けると、中には一枚の銀貨を見つけた。

 まさかとは思ったがカイが昔から聞いている伝説の銀貨にそっくりだった。

 カイは銀貨を手にすると、右腕に激痛が走る。

 右腕が焼けるように熱い。

 そして一行の呪文が書かれていた。

 数日すると街にドラゴンがやってきた。

 ドラゴンは数年に一回街の近くを通り過ぎ、数十年に一回街に被害をもたらした。

 ドラゴンが出ると住民はすぐに遠くへ避難した。

 カイは呪文を信じて、こちらへ近づいてくるドラゴンへ向かって右腕を伸ばして初めて唱えた。

 するとたちまち右腕から炎が噴き出してきてドラゴンめがけて炎が降り注いだ。

 瞬間快感と共にドラゴンが炎で燃え始めた。

「燃えたぞ! ついに俺はこの街を破壊するドラゴンを真っ黒にしてやった。俺はまるで空から降ってくる稲妻のように生きた。あまりの威力に俺はおどけて見せた」

 カイは空に向かって叫んだ。確かにドラゴンを倒した僕は英雄だが、ただの人だった。

 そう思いつつも僕はドラゴンを倒した。

 町の人はドラゴンがここを通り過ぎたと思っていた。あまりの炎の威力にドラゴンは灰となり風に乗って消え去ったのだ。

 鮮明に頭の中に宿るのはオーロラのようなギラギラと輝く炎だった。右腕に刻まれた呪文はもうすでに消えていた。

 僕は剣士として生きてきたが、実はあの日手に入れた銀貨をまだ持っていた。

 後日町にまたドラゴンが再来したとき、それは伝説で恐れられた町を粉々に破壊したドラゴンだった。

 どうしてこうもドラゴンが何度も再来するのか、僕はもう一度銀貨を握りしめた。すると銀貨が黒く燃え始めた。

 僕は通りに出て住民が避難した後の閑散した町の中にドラゴンを見た。僕は銀貨を宙に投げた。そして持っていたライトセーバーを起動した。するとライトから一本の稲妻が飛び出した。途端に空に向かって稲妻が伸びて雲がとぐろを巻いて、ドラゴンと僕を覆いつくした。僕は空に向かって人差し指を指した。すると空から稲妻が降り注いでドラゴンへと向かう。

 僕は人差し指を口に当てた。

 瞬間ドラゴンは粉々に砕け散った。


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