550神猫 ミーちゃん、つ、使えないの~。

 神猫商会の本店に戻りみんなと話をする。



「今まで使っていたお餅はどうするのですか?」


「お団子としては使いませんが、ハンターさん用の保存食としては残します。後日、海苔が手に入れば磯辺餅としても売りたいですね。作る量は減らしますが製造はそのままです」


「了解しましたわ」



 海苔だ海苔さえあれば、また餅は返り咲く! アシモフさん、頼んだぞ!



「お団子の材料が変わる以外に変更はないのか?」


「前に造った大福を売ろうかと思いますが、作るのに技術がいるのでその技術の習得からですね。それと使う餡子の量が増えるので誰か一人調理場に専属で入ったほうがいいでしょう」


「それなら私が入ります」



 イルゼさんが手を挙げた。まあ、そうなるかな。クリスさんもクラウディアさんもコンラートさんも固定客を持っている。イルゼさんが人気がないわけではないけど、美男美女だけあってねぇ……。


 なので、必然的にイルゼさんに調理場に入ってもらったほうが効率がいい。


 とりあえず、イルゼさんに作り方を伝授。出来たものを保温器に入れ、時間経過での品質の確認。その間に大福を二人で作り、店頭に並べて試験的に販売してみる。


 常連のお客さんが物珍しと買ってくれるが、手に引っ付かないようにまぶしている片栗粉に戸惑いの表情。口の周りが真っ白になっている。それに服に付くとなかなか取れない。


 それでも、お団子とはまた違う食感を楽しんでいるようだ。


 ミーちゃん、お客さんの食べてる大福見て羨まし気に見ない! さっき食べたでしょう!



「みぃ……」



 五十個作った大福がすぐに売り切れた。これもいけそうだな。イルゼさんも頷いている。


 昼食後もお手伝いしながら保温器の中身を確認。店じまいした後に確認しても、色も形も食感も全く問題ない。


 外に置いていたものは少し硬くなっている。それでも、お餅に比べれば長時間柔らかさを保っていられる。もっと長時間柔らかさを保つようにするなら、砂糖か水飴を加える必要がある。砂糖は無理だけど水飴ならできるな。


 保温器のお団子はペロたちが美味しく頂いた。夕食後のデザートとして。見てるだけで胸やけがした……。


 翌日、ヴィルヘルム支店に行き、こちらでもお団子の材料を変えることにした。



「グラム。少し強くなった気がするな」


「そ、そうか!」


「いや、気がするだけだな」


「お、おい!?」


「みぃ……」



 アレックスさん、酷い。


 アレックスさんとロッテとダミアンに取りあえず伝授。



「柔らかくて美味しいですね」


「でも、食べ応えが減ったような?」


「み~?」


「今までの餅はどうするんだ?」



 ヴィルヘルム支店でも本店と同じように、ハンターさんたちなどの保存食としての販売だけにする。ヴィルヘルムではハンターさんたちだけではなく、一般のお客さんや、食堂や酒場からの注文もあるので需要は高い。



「前にも話したが近々、ここに四人来ることになっているが問題ないか?」


「問題ないです。到着したらここと本店で二人ずつ、分けましょう。ある程度したらフォルテとニクセで屋台神猫屋を始めたいです。将来的には店を持ちたいですね」


「ここで働きたいという連中が多くてな、向こうでは大変らしいぞ。話し合いで済まず、拳で語っている奴らもいるそうだ」


「み、み~」



 拳で語る……熱血か⁉ 平和的に決めてほしいな。すぐには無理だけど、働いてくれるのは大歓迎だ。烈王さんの神殿の前に神猫屋をオープンさせようか? こんな感じだよって。売り上げはゼロだろうけど、烈王さんにはお世話になってるからね。



「み~!」



 夕方になり、試しに味噌田楽を売ってみる。香ばしい味噌の焼ける匂いが漂い始めると、匂いに誘われ注文が入り始める。冷えたエールと一緒に。


 ヴィルヘルムのメンバーにも味見をしてもらう。



「これは美味いな」


「濃厚な味噌の味にこの白いのも負けない美味しさですね」


「み~」



 好評のようでなにより。問題は日持ちしないので、俺が届けに来ないといけない。フーリアさんに指南書を作ってもらい、こちらでも豆腐作りをしてもらおう。


 エールを販売し始めると物珍しさからか田楽が瞬く間に完売。味が濃いのでエールに合うのかも。


 仕方ないので、うちの夕飯用に取っておいた豆腐を放出。フーリアさんには当分頑張ってもらわないと駄目だな。



 家に帰るとルーカスさんから面接の件で話をされた。どうやら、選考した五十人の内五人が今回の暗殺未遂事件に関わった家の出で処罰されたそうだ。



「み~?」



 WHY~? 俺の暗殺を企んだ連中の子弟がなんでうちに雇われようとしたんだ?



「おそらく、間者として潜り込ませようとしたのだと思います」


「暗殺が後か先かはわからないけど、こういう悪だくみは逆に関心してしまうなぁ」


「み~」


「利益のためならなんでもする。それが貴族ですから」



 貴族怖いわー。残りの選考した貴族の子弟は大丈夫なのか? 不安しかない。


 取りあえず、試験問題は作った。それに文官志望者には志望動機とアピール文の作成。武官は試験官のルーさんとの模擬戦をしてもらう。


 最初、試験官をグラムさんにしようかと思ったけど、宗方姉弟と模擬戦をさせ評価させたら弱いの一言。使えねぇーってことがわかった。



「み、み~」


「ミ、ミー様……」



 なので、うちの常識人であるルーさんを試験官に決めた。


 ペロとセラもやりたがったが、グラムさんと同じ光景しが浮かばなかったので却下した。



「み、み~」






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