537神猫 ミーちゃん、全員整列~!
「飽きたにゃ。カオリンもトシも弱ちぃにゃ」
「にゃ」
「しょうがねぇだろう。こいつらが戦い方を学んだのはつい最近だ。ここまでやれるようになっただけでもよくやってるぜ」
「み~」
勇者の素質は持っているとはいえ、武器さえ握ったことのない戦いとは無縁の世界からやって来たのだ。
そう簡単に強くなれるわけがない。特に俺と違って武器を使ってとなると尚更だろう。
俺なんか武器なんてまったく使えない。スキルはどちらかというと、ゲーム感覚が近いから慣れれば使いやすい。体も動かさないからな。
「複数相手はつらい~」
「お、終わったよ~」
「ご苦労さん。だが、まだまだだぜ。戦い方がなっちゃいねぇ。というか、心が弱い。次はペロとセラがやるから、どう戦うかちゃんと見とけよ」
「そうにゃ、ちゃんと見てるにゃよ。戦いは気合にゃ~!」
「にゃ!」
「「は~い」」
見るのも訓練のうち。俺にはあまり役に立たないかな。俺が接近戦をしても邪魔になるだけだ。スキルを組み合わせれば別だけど。
俺はそんなみんなとは別に素振りをする。神猫剣ニャンダーソードを手に入れたのだから有効に使うためには訓練あるのみ。
神速剣も使ってみたい。烈王さんに今のままだと、危なくて使えないと言われているからね。勇者は高速剣の上位、光速剣を使えていたといっていた。
宗方姉弟に負けていられない。目指せ、剣豪。いや、剣聖!
オーク狩りを終えて、グラムさんを連れて味噌と醤油造りの村に来た。
「今日はどのような御用で? まだ味噌と醤油は出来ていませんが?」
「み~」
今年は以前の蔵と新しく建てた蔵いっぱいに仕込んでいる。出来上がるのが楽しみだ。って違うんです!
「今日はこの村の若者を私の私兵団にスカウトに来ました」
「私兵団ですかな?」
村長には俺が貴族であることは話してある。勇者の子孫、スカウトしたいです!
「まあ、お世話になっている神猫商会さんの頼みでは断れませんな。どうせ、若い連中は村を出て行くんです。好きなだけ連れて行ってください」
村の若者は長男は家を継ぐけど次男以降や女性は家を出ることが多い。新しい土地で土地を得るか、町に出て仕事を得るかハンターになるかだ。
村の中央にそういった若者を集めてもらい話をする。もちろん大事なのは本人のやる気。無理強いはしない。
そして、残ったのは十人。十人ともオートソードを光らせることができたが、その中でも三人がオートソードを使えるレベルだった。
もちろん、十人全員雇う。十人だから荷馬車は二台必要かな。その荷馬車分と護衛のハンターを雇う分の準備金を渡して、取りあえずニクセに来るように伝える。
街道の雪が解けるまではニクセで訓練してもらい。雪が解けたらブロッケン山の街道を通り、フォルテに来てもらうことになる。
「どうです? ほかの村々にも募集の話をしましょうか? ほかの村でもなり手はいると思いますよ?」
「ぜひお願いします! 人材不足で困っています。兵士じゃなくて、役所の職員並びに神猫商会で働いてくれる人も募集中です!」
「み~!」
「そ、そうなんですね。声を掛けておきます」
いやぁ、思わぬ収穫。すぐには使える人材ではないけど、育てていけばいい。
こうして知り合った人から紹介され人が増えて行けば、その紹介された人からまた更に人が紹介され、うちの人材不足が解消されていく。……はず。
なにより、この周辺の村々との関係も良くなり、米やもち米、味噌、醤油が増産してもらえるようにもなる。
まさに、人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なりだね。
ヴィルヘルムの町の近くの砂浜に来ている。砂浜に来て何をするのか?
そう、砂遊びだ! 冗談だけど、あながち間違いでもない。
今朝、ミネラルウォーターを補充しようとした時に新しい猫用品が出ていた。
その名もネコカップゴーレム! 砂で子猫ゴーレムを作ることが出来るらしい。これはやってみないとね。
子猫と言っているが、大きさはミーちゃんより大きい四十センはある型枠。これが子猫か?
型枠に砂を入れ押し固めて、ひっくり返して型枠を外す。香箱座りの子猫が出来上がった。動かないね。でも楽しいから、いくつも作ってしまった。
ずらっと並ぶ香箱座りの子猫たち、壮観だ。
「み~!」
みんな動けぇ~って、動くのこれ?
「み~!」
香箱座りしていた子猫たちが一斉に立ち上がり、ミーちゃんの前に整列。
「み~!」
ミーちゃんの号令の元、動き出すネコカップゴーレムたち。
あっちこっちに自由に走り回る。まったくもって統制されていない自由気ままな動き。猫だからか?
俺たちの周りを走り回るネコカップゴーレム、視界から見えなくなったネコカップゴーレム、グラムさんにじゃれついてるネコカップゴーレム。なんて、フリーダム……。
「みぃ……」
数が多すぎて、ミーちゃんに統率できないみたい。数を作りすぎたかな?
「み~」
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