474神猫 ミーちゃん、飛ぶ!?
まずはグラムさんと同じ雷スキルと重力スキルだな。これで覚えられれば習得方法は確実ということになる。ただし、教える側がそのスキルを覚えていないと駄目という難点もある。
「では、簡単な重力スキルから行きましょうか」
「なぜ、簡単なんだ?」
「み~?」
なんでか? なのでグラムさんに重力スキルを覚えせた時に考えた仮説を話す。
「どうしてドラゴンは飛べるのでしょうか?」
「み~?」
「飛べるからだろう?」
意外とアレックスさんも脳筋か!?
「鳥のように飛ぶのに適した体の構造ならまだしも、ドラゴンや飛竜の体形で空を飛ぶのはありえないです」
「そうか? 翼はちゃんとあるぞ?」
「み~?」
「確かに翼はあります。ですが、飛竜はともかくとして、ドラゴンの翼はあの巨体を浮かせるには小さすぎます」
「普通に浮くがな」
そう、そこなのだ。ドラゴンや飛竜はグライダーのように滑空して飛ぶわけじゃない。自分で浮遊して風向きに関係なく自由に飛ぶだけでなく、空中で停止飛行までできる。翼の力だけであの巨体を制御できるはずがない。
「そこなのです! ドラゴンは意識しないで本能で重力スキルを使っていると思われます。意識しないで使っているので、スキルとして認識すらしないほどに体の一部化していると思うんです」
「で?」
「そこを、それは重力なんだと認識させてやれば、スキルとして表面に出てくるのだと思います」
「ならば、やってみよう」
やり方はグラムさんの時と同じ、俺がアレックスさんに重力スキルで負荷を掛け、アレックスさんはそれに耐えるだけ。
重力二倍、まったく苦にしてない。重力三倍、ちょっと表情が変わった? 重力四倍、さすがにつらいか? 重力五倍、片膝をついたね。 重力六倍、両手両膝をついてしまた。
さすがにここまでにしよう。まあ、これ以上は俺も無理。
だが、この状況を見てもアレックスさんはグラムさんより強いということがわかる。グラムさんの道のりは遠いな……。
しかし、おかげでアレックスさんは重力スキルを覚えた。やはりドラゴンは重力スキルを覚えやすいのだろう。
「これが重力スキルか……」
「み~」
アレックスさんは自分自身に重力スキルを使って確かめている。
「この体でも飛べそうだな」
ドラゴン形態にならない状態で、ミーちゃんとは違いスゥーっと浮き上がる。ミーちゃんはプカプカだからね。
ちなみにフライングボードの訓練は上手くいっていないようだ。あっちに行っては建物の壁にぶつかり、コテン。こっちに来ては立ち木にぶつかり、コテン。それでもあきらめず訓練するミーちゃんは頑張り屋さんだ。
それにしてもアレックスさんは自由自在に飛び回り、すでに重力スキルを使いこなしている。
なるほど、重力スキルを使いこなせるようになるとああいう風に空を飛べるんだね……。俺のドラゴンが飛ぶ仮説が立証された瞬間だな。俺も空を飛べるように訓練しようと心に誓ったね。
そんなアレックスさんを見て、グラムさんは唖然。目であれできる? と問うと、首をプルプルと横に振る。才能でも負けているようだ……。
ミーちゃんは恨めしそうに見上げてるね……。
「みぃ……」
ミーちゃん、アレックスさんに対抗しようと浮き上がるが、やっぱりプカプカ。一生懸命、猫かきをして移動している。根本的に使い方が違うと思うんですけど?
なので、ちょっとだけアドバイス。
「ミーちゃん、浮いた状態で、行きたい方向と逆のほうに力を押し出す感じにしてみて」
「み~?」
一瞬考えてから真剣な表情になり、むむむっと力を籠める。
びゅーんと凄い勢いで飛んで行った……。
「みっ!? み~~~~!」
あっ、ヤバい。
「ミーちゃん、ストップ!」
「み~~~~~~~!」
駄目だ……慌てていて制御できていない。壁にぶつかる!?
「力が入りすぎだ」
「みっ!?」
壁にぶつかる寸でのところで、アレックスさんがミーちゃんをキャッチ。おぉー、さすがイケメン。なにをやってもイケメンだ。
「み~」
ミーちゃん、ありがと~とアレックスさんの顔をペロペロ、スリスリ。不死身とはいえ、痛いものは痛いからね。よかった、よかった。
「そういえば、長の作った格闘場でハンデ戦として、これと同じ力で力を抑えられたことがあった。あれが重力スキルだったんだな」
ドラゴンの格闘場……ヤバい雰囲気しかしない。
「シュヴェルトライテ様もあそこで常時訓練してたはず。ならば、この重力スキルを使っていたのではないか?」
「まじっ!?」
グラムさん、両手を地面につけ打ち拉がれている。
それが事実ならグラムさんの前に立ち塞がる壁は相当ハイスペック……越えられるのか?
なるほど、強いわけだよ。ヴェルさん。
「よし、感覚はつかんだ。ネロ、次だ」
ドラゴンが優秀なのか、アレックスさんが優秀なのか、はたまたグラムさんがポンコツなのか……。
では、雷スキルの習得をしますか。ミーちゃん、手伝って!
「み~」
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