472神猫 ミーちゃん、なにも企んでないよ~。
一生懸命に手を振るレーネ様に煽られるかのように歓声が大きくなっていく。王宮の兵士もハンターも観衆を抑えるのに必死。正直このままだと暴動が起きかねない。レーネ様にはそろそろご退場願おう。
グラムさんに指示を出して、レーネ様を壇上から降ろしてもらい、店の中に入ってもらう。
ハンターさんたちに指示を出して、店内に一気に押し寄せないように列を作らせる。貴族連中がレーネ様に会わせろと文句を言ってきたので、
「私事のため会わせられない」
と言ったら、その貴族の護衛が無礼だと俺に手を出そうとしたので、グラムさんにボコられた。貴族がいろいろ言ってきたが、ブロッケン男爵の手形とまだ持っていた特使の手形を見せて黙らせた。
顔を真っ赤にして手をプルプル震わせていたが帰っていった。おそらく、特使の手形が効いたのだろう。ついでに、ほかの貴族連中も買うつもりがないなら帰れと言っておいた。全員帰って行ったね。
「馬鹿者が多くて困ります」
「み~」
ニーアさん、あなたもモフモフ馬鹿ですけどね。
「なにか仰りましたか? ネロ様」
「いえ、なにも……」
怖ぇーよ。その眼力だけで
すぐにレーネ様を王宮に帰そうと思ったけど、さっきの貴族連中が店の裏の馬車の出入り口の所に屯っているので少し時間を置かないと駄目だな。
王宮の兵もお客の整理誘導でまだ忙しいのでちょうどいい。
店は大賑わい。おかげで神猫屋もおこぼれに預かり大繁盛。
『パティスリ プランセス レーネ』のお客は遥か彼方まで列ができている。品物が間に合うか心配だ。レティさんを連れて調理場に行けば、そこは戦場。
王宮からも料理人の助っ人が来ていて、フル稼働状態。みなさん、鬼気迫るものがある。出来上がっているのもを収納して退散した……。
夕方になっても客どころか列も絶えない。貴族連中は諦めたようでいなくなった。レーネ様もペロ成分を十分に補給し、ニーアさんもモフモフに満足してホクホク顔で兵を引き連れ帰って行った。
夜になりみんなを家に帰した後も、列は解消したが客足は絶えない。さすがにキリがないので八の鐘が鳴ったところで店じまいさせてもらった。
店の掃除と、フレアさんが売り上げの集計をする間に調理場に行って、出来ている分を明日の分として収納。明日も早朝から目一杯頑張ってもらわないといけないから今日はこれまで。落ち着くまでは当分この状態が続くだろう。
「半日でこれだけ売り上げるとはねぇ……」
「み~!」
売り上げの集計が終わったフレアさんが、山のように積まれた硬貨を見てため息。ミーちゃんもその売り上げにびっくり。
でも、原価率が高いから落ち着いてからの平均でいくと、神猫屋ほどの利益にはならないと思う。それでも、凄い売り上げには違いない。
「あんたが儲けてる理由がわかったよ」
「勘違いしないでください。神猫商会は経営努力の賜物です。手を抜けば、すぐに客は離れます。波に乗せるにはこれからが大事なんです」
「み~」
取りあえず、一部の売上金を預かり、ミーちゃんとテラを連れハンターギルドに向かう。パミルさんにテラを渡して今日の清算を頼み、明日の警護もお願いしておく。
「儲けておるようじゃな」
「神猫商会は場所を貸しているだけですよ。ギルド長」
疲れ顔のゼストギルド長が話し掛けてきた。ロタリンギア関連で相当に忙しいらしい。
「では、誰が儲けておるんじゃ?」
「そうですねぇ。義賊ギルドかな」
「裏に義賊ギルドがおるのか……なにを企んでおる?」
「深読みです。何も企んでいませんよ」
「み~」
なので、経緯を簡単に話して聞かせる。神猫商会ではなくペロとセラが出資者であることも。
「医療の発展のためか……レーネ様を担ぎ上げてか?」
「研究費用が必要というのもありますが、国民も恩恵を受けることです。みんなが買ってくれたお金が医療の発展に繋がるなら、国民の理解も得られるというものです」
「義賊ギルドに当初資金を出させ、更に人気のあるレーネ様を表に出し確実なものにするか……策士よのう」
「み~」
なんですかその目はみんなwin-winの関係ですよ。それに、何度も言いますが神猫商会はノータッチです!
「しかし、仕掛けたのはネロくんであろう?」
「なにか問題でも?」
「み~?」
「なぜ、義賊ギルドを巻き込んだのじゃ?」
「材料、人材の確保。それに闇ギルド対策ですかね。大きなお金が動くと、馬鹿な貴族と闇ギルドが節操なく顔を出してきますから。貴族はこちらで何とかできますが、闇ギルドは義賊ギルドにお任せです。しのぎを削る間柄ですから」
「み~」
「なるほどのう。公認で国と義賊ギルドは手を組んでおるということか」
闇ギルドは厄介だからね。Gの如くどこからともなく湧いてくる。餅は餅屋だから義賊ギルドに頑張ってもらわないとね。
「み~」
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