471神猫 ミーちゃん、レーネ様のお店オープンです!

 と思っていたら続きがあった。神人が作ったシステムに行けと。そういえば、この大陸のヴァルハラ・システムに行けばいろいろな知識や道具が手に入るかもしれない、と流れ迷宮の神人が言っていたな。


 行きたいのはやまやまだけど、今は無理だ。ヴァルハラ・システムはユーリさんのエルフの国にあるはずだ。ユーリさんが帰ってくるのと、スミレがいないとどうしようもない。


 それに、もうすぐレーネ様のお誕生会だし、年明けにはロタリンギアの進攻がある。行くとすればその後だ。魔王との決戦前には行ってみたい。魔王対策でいろいろ助言がもらえるかもしれない。


 それと、ミーちゃんが神界に帰るヒントもあるかもしれないからね。



「み~」



 ゼルガドさんにニトロセルロースは世間に公表しないことを伝えた。



「なんでだ? あれは役に立つぞ?」


「フローラ様から警告……もとい、神託がありました。封印しろと」


「神託だと!? 警告ってことは神罰が下るのか!?」


「世間に公表すればそうなります。ですが、俺が魔王対策として使う分については許可が下りていますので俺用の武器の開発はします」


「ネロの専用武器だな。いくら使える?」


「金に糸目はつけません。いくらかかっても構わないので最高のものを作りましょう」


「お、おう。金に糸目をつけねぇか……」



 無煙火薬の薬莢にライフリングの刻んだライフルになるだろう。撃鉄ハンマー引金トリガー、雷管は必要ない。代わりに元の引金トリガー辺りから薬莢まで銅線か何かでラインを作ってもらう。引金トリガーは俺の雷スキルだ。


 雷スキルを使えない者には扱えない専用銃となる。専用っていいよねぇ。exclusive use of nero。格好いいよね!



「み~?」



 今日は『パティスリ プランセス レーネ』のオープンの日。早朝から関係者が集まりオープンの準備に大忙し。もちろん大家の俺も狩り出されている。


 オープン時間は午後の一の鐘の予定。


 なんと、レーネ様が自ら赴いて挨拶してくれるそうだ。挨拶と言ってもスピーチをするわけではなく。一言お言葉をいただくだけね。


 そのため、王宮から警備のための兵が来ていて、一緒に警備について打ち合わせをしている。うちからはレティさんが白狼一頭と裏で警護。グラムさんがレーネ様のボディーガードとなる。グラムさんのボディーガードの件は、王妃様からのお願いだ。


 売り子さんも今日は忙しくなるので、王宮の侍女さんがお手伝いしてくれる。


 プリンとシュークリーム作りは朝から常時稼働中。牛乳を使わない水飴とハチミツのプリンは半額。シュークリームを四つ以上買ってくれた方には、メレンゲクッキーをひと袋をプレゼントすることにした。


 今は王宮から花が運び込まれ店前に飾りつけられ、俺はガラスケースに入れる氷作りをしている。裏の空いている部屋にも箱を用意していて、氷を入れ在庫を保存しておく準備も万端だ。


 昼を過ぎるころになると人が集まり始める。よく見れば貴族連中もちらほら見える。どんどん集まる……あれ? ちょっと多くね? 


 これは不味いな。王宮の警護担当の責任者さんと話しをして、急遽ハンターを警護に雇うことにした。準備を手伝ってくれていたルーさんにお願いして、ハンターギルドに行ってもらう。


 そんなあたふたした中、王宮の馬車が本店の裏に到着。籠を持ったニーアさんとレーネ様が降りて来る。取りあえず、店の中の応接室に案内した。接待役はペロたちだ。



「こっちにゃ!」


「はいでしゅ!」



 神猫屋のお団子とホットハチミツレモンを、レーネ様とニーアさんにお出しする。もちろん、ペロたちの分もね。


 ニーアさんは、クオンとセイランをモフモフするのに夢中。そんなニーアさんが持っていた籠の中身はルカとレア、ノア、カイだ。



「み~」



 ミーちゃん、嬉しそうによく来たの~とペロペロ。せっかく、兄弟姉妹が集まっているので、テラも連れてこよう。



「み~!」



 ギルドの中は慌ただしい状況だった。誰のせいだ? 俺のせいではないはずだ。



「ちょっと、ネロくん。急な依頼はやめてよね!」


「活気があっていいじゃないですか」


「ぐっ……言うようになったわね。この子」


「テラの兄弟姉妹がそろってるので連れて行きますね。どうせ、こんな状況ですし」


「誰のせいよ!」



 だから、俺のせいではないからね。パミルさん。


 テラを連れて帰ると、みんな大喜び。レーネ様もニーアさんも。ミーちゃんたちは猫団子になっている。



「さあ、そろそろ時間だよ。準備はいいかい」



 フレアさんが呼びに来た。ミストレティシアさんは来ていない。本人は来たがったが、さすがに断った。レーネ様のお店のオープンに、義賊ギルドの女帝がくるのは不味いでしょう。


 闇ギルド連中に国と義賊ギルドの仲をみせつけるという意味ではいいかもしれないけど、この店の共同出資者のことなど調べがついているだろうから意味がない。


 レーネ様はグラムさんの護衛の下、ペロとセラを引き連れ店側から表に出る。


 わぁー! っと歓声が上がり、グラムさんがレーネ様を壇上に乗せてあげる。更に歓声が上がる。ペロとセラも壇上に上がり手を振っている。



「レーネとペロしゃんとセラしゃんのお店でしゅ! 買ってくだしゃい!」



 そう言って、ぺこりとお辞儀をした。もの凄い歓声が上がる。壇上の前を警備してる兵がなんとか観衆を抑え込んでいるけど大変そうだね。



「み~」



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