445神猫 ミーちゃん、本店開店祝いをもらう。
「勇者が一人行方不明になっておるそうだ」
「みっ!?」
勇者が一人と言うけど、向こうに残っているのは王様になったという闇遠藤、ヤンキー将軍、奥村さんの三人だ。
「行方不明の勇者って誰ですか?」
「み~?」
「女性と聞いておる」
ロタリンギアの兵とハンター合同で、オークの間引作戦中のことだったらしい。オークキングのことは世間に伏せられているけど、オークを狩らないと周辺の町に被害が出てしまう。
それを避けるために、上位種がいるオークの集落攻めが国軍とハンター合同で行われたらしい。危険だとわかっているけどオークの肉は高級肉として高値がつく。大勢のハンターが参加し、そこに間者が紛れ込んだそうだ。
しかし、そんなことをすればオークキングが黙っているわけがない。国軍とハンターがオークの集落を攻めてる間に、オークの援軍が回り込んで国軍とハンターたちの後ろを突かれ国軍とハンターたちは敗走。その時に奥村さんは行方不明になったらしい。
これがただのオークの上位種だったらこんなことはなかっただろう。人、いやそれ以上の知恵を持つオークキングだからこその戦術。警戒を怠ったロタリンギアが無能なのか、警戒を掻い潜って側面を突いたオークキングが優秀のかは、情報がないので判断がつかないけど。
しかし、オークキングに手玉に取られているのに、本当にヒルデンブルグを攻めるつもりなのだろうか? そんな余裕があるのか? わからない……。
「みぃ……」
「ロタリンギアは代替わりしたとともに、先代の王の腹心であった多くの重臣を粛清しておる。現国王が貴族政を廃止すると息巻いておるそうだ。そのせいで人材が不足しておるようだのう」
闇遠藤は民主主義でも始めるつもりか? 気持ちはわかるけど、無理だな。そもそも、自分が国王になっているのに封建社会を否定するなんて矛盾している。どう考えても、ほかの貴族が黙っていない。ルミエールより酷い内乱になってもおかしくないぞ。
「危ういですね」
「危ういのう」
「みぃ……」
今は民主主義を目指していても、闇を抱え闇落ちする可能性のある偽勇者なのだ。下手をすれば貴族を全て粛清しての独裁政治。魔王誕生だな。
「ほかに情報は?」
「み~?」
「今のところはそんところじゃ」
いい話ではなかったけど、知らないよりはマシだな。奥村さんの安否は気になるところだけれど、ロタリンギア国内のことでは手が出しようがない。生きていることを祈るしかない。
「み~」
宗方姉弟には聞かせないほうがいいだろう。変に心配させて闇落ちされたら困る。もっと、落ち着いてからだろうな、話すのは。
ハンターギルドを出て神猫商会本店に戻ると、教会から使者が来て俺を呼んでいると聞かされる。なんだろう?
「み~?」
教会に行ってヨハネスさんにアポを取ると、すぐに部屋に通される。部屋の中には娘さんのアイラさんとセイラさんもいた。
「お待ちしておりました。使徒様」
「み~」
三人は土下座せんとばかりに頭を下げてくる。ってアイラさんとセイラさんにも話しちゃったの?
「はい。娘たちには使徒様のことは話してあります。私になにかあっても、この二人が教会と使徒様の橋渡しをしますのでご安心を」
アイラさんは家の敷地内の孤児院の院長、セイラさんはフォルテの孤児院の院長をお願いしている。まあ、この二人なら問題はないと思う。でもこれ以上、秘密を知る人を増やされても困る。どこから情報が漏れるかわからない。ここは釘を刺しておかないと。
「ヨハネスさん、わかっていると思いますが、これ以上秘密を知るの者を増やさないでくださいね。アイラさんもセイラさんもですよ」
「もちろんでございます。フローラ様からも同じようなことを神託で受けております」
神託? 俺たちのハウツーブックには何もきてないよね?
「み~」
ということはヨハネスさんが神託を受けたんだ。神官長として箔が付いたんじゃない?
「受けは受けたのですが……」
急に三人が本当の土下座をしてくる。なに? なんなの?
「み~?」
「何卒、何卒、使徒様にお聞き入れしていただきたい儀がございます!」
話を聞くと、フローラ様から神託を受けた時に、なにやら物も一緒に受け取ったそうだ。それが机の上に載っている招き猫三つ。
部屋に入った時から気づいてはいた。気になってはいたが、ルミエールの初代の王様はおそらく日本人だと思っているので、招き猫があってもおかしくないだろうとあえて無視していた。あれ、欲しいなぁって思っていたけどね。ついでに達磨も欲しい。
それがフローラ神から送られたものだとすれば話は違ってくる。更に詳しく話を聞くと、神猫商会の本店開店祝いにフローラ様から送られたものなんだそうだ。なかなか、粋なことをするね、フローラ様は。
「み~」
それで、土下座しているのとどう関係があるんでしょうか?
「み~?」
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