417神猫 ミーちゃん、大店と肩を並べたいようです。

「急ぐ必要がありそうね」


「ロタリンギアの進攻が近い今、国境の砦が落ちるとは思いませんが、急ぐことに越したことはありません」


「商業ギルドに協力を要請しましょう」


「取りあえず、商隊を送りフォルテに着いてから、ブロッケン山の街道が使えると知らせればいいでしょう」


「今から準備してもそのくらいにはなるわね……」



 王妃様が考え込む。あとは王妃様に丸投げだ。今から準備しても、ブロッケン山の街道を商隊が通るのは、レーネ様の誕生会後になるだろうから問題ない。


 クオンとセイランをみんながモフっているので、俺は宮廷料理長の所に顔を出す。


「ネロが言ったとおり、問題は色だ」


 宮廷料理長たちも試行錯誤しているようだが、やはり黒砂糖が問題らしい。


 それでも、白っぽい砂糖が目の前にある。どうやったんだ?


 説明してもらうと、黒砂糖を温水で溶かしろ過し結晶化させる。その結晶化した砂糖を更にお湯に溶かしろ過して結晶化をさせるを繰り返した結果だそうだ。相当な手間がかかり、大量に黒砂糖が必要になるという。


 超が付く贅沢品だ。レーネ様用のケーキだけなら、それでなんとかなるが、招待客の分はあまりにも手間がかかるので無理という現実。


 料理長が悩むわけだ。



「レーネ様のケーキだけ純白で、他は色を付けるのでは駄目ですか?」


「あえて色を着けるか?」



 生クリームを攪拌して黒砂糖も加える。茶色っぽいホイップクリームが出来たら食用色素を入れて着色。赤、黄、青がある。植物から抽出した色素らしい。



「色が濁るな」


「そうですね」



 うーん。色は着いたが残念ながら見栄えが悪い。困った。



「純白のケーキはレーネ様だけにして、他の招待客には別のものを出すしかないですね」


「仕方あるまい。なにか案があるか?」


「少し考えさせてください。案がまとまったらまた来ます」


「うむ。こちらでも考えておこう。それから、オーク肉が欲しい。商業ギルドに問い合わせたら、ネロの商会が卸したと言っていた。伝手があるなら金に糸目はつけんから手に入れてくれ」



 商業ギルドめ、余計なことを言いやがて! ギルドは国の権力に屈しないんじゃなかったのか!



「如何ほどご入り用ですか?」



 まあ、金に糸目はつけないと言ってるからいいか。お、お金に目がくらんだわけじゃないからな! 


 ただ、手持ちが少ないから、狩って来ないと駄目だ。



「十……いや、二十欲しい。可能か?」


「解体をお任せしていいなら、手に入れて来ます」


「問題ない」



 毎度あり~。どうせ、クイントのハンターではオークリーダーを倒すのは難しい。誰も挑戦していないだろう。一回狩りに行けば十体以上は手に入る。宗方姉弟を訓練がてら連れて行こう。



「明日、商業ギルドと話し合いを持つことにしたわ。大店の代表も呼んでいるけど、神猫商会も参加する?」


「み~!」


「いえ、遠慮しておきます」


「みっ!?」


「あら、残念ね」



 ミーちゃん、な、なんで!? って驚いた顔をしてますけど、神猫商会は新興の商会だからね。大店の商会と肩を並べるにはまだ早い。妬みも買いたくない。


 なにより、忙しい。ミーちゃんや俺が関わらなくても進められるなら、そっちでやってほしいというのが本音だ。



「それから、ヒルデンブルグへの援軍の件なのだけれど、北の国々から思った以上に傭兵が集まりそうよ」



 北の国々から傭兵と傭兵崩れが各三千人来るそうだ。二千人ほど増えることになる。そのほかにうちの私兵と、ニクセの東にある鉱山町から恩赦付きで鉱山送りになった犯罪者が加わる。



「そこで、ネロくんが持っていた兵器の設計図から作った。クロスボウが二百ほどあるけど持っていく?」


「持っていきます!」



 クロスボウは使い方次第で強力な武器になる。持っていかないわけがない。


 用事も済み、クオンとセイランとの顔合わせも終わったので、クロスボウをもらって帰る。


「またきてくだしゃい!」


「み~」



 ミーちゃんが来るよ~と挨拶して、レティさんがレーネ様に手を振る。レーネ様に気に入られる、ペロとレティさんの共通点ってなんだ? 食いしん坊?



「ようこそお出でくださいました。神猫商会様。本日はどのようなご用件で?」



 いつもの担当者さんが出て来た。クオンとセイランはレティさんと表で待ってもらっている。



「塩の件で来ました」


「み~」


「王宮からの件ですかな? 明日、王宮に伺うことになっていますが、神猫商会様も?」


「いえいえ、うちは呼ばれていませんよ。大店の商会だけが呼ばれると聞いています。うちは大店と肩を並べられるほどの商会ではありませんので」


「なにを仰られます。飛ぶ鳥も落とす勢いの神猫商会様なら、誰も文句など言いませんよ」


「み~」



 だからね、ミーちゃん。文句は言わないかもしれないけど、妬み嫉みは買いそうだからパスなの。



「みぃ……」


「今日来たのは明日の話にも繋がることなのですか、今現在塩の値段が上がってますよね?」


「そうですなぁ。南への街道が二つも使えない状況なので致し方ない状況です」


「対策は取っているのですか?」


「み~?」


「国からの補助金が出ているので、二割ほど高く買っていますが、正直足りていない状況です」



 まあ、予想通りの内容だ。


 さて、どうしますかねぇ。神猫商会代表である会頭のミーちゃん。



「み~」




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