412神猫 ミーちゃん、雷スキル使えますよ。

「じゃあ、本当にドラゴンなんですか?」


「さっきから、そう言ってんだろうが」


「驚きだよ……」


「み~」



 だから宗方姉弟、口じゃなく手を動かせ!


 魚と宗方姉弟のリクエストでオーク肉高級肉も串に刺して焼いている。さっぱり塩味柑橘添えと、こってりみそダレだ。いい匂いが辺りに漂う。



「ネロ……俺にも……くれ……」



 ボロボロの白髪イケメンが這って来て、プルプルと手を伸ばす。


 お久しぶりですね。グラムさん。



「み~」



 ミーちゃんも、お久し~ってグラムさんの頭をテシテシしている



「あっ、グラムさんだ。見なかったと思ったらここにいたんですね」


「イケメン、ボロボロ……」



 しょうがない、取りあえず、ミーちゃんのミネラルウォーターを飲ませる。



「俺、復活!」


「お前、いい根性してるな。ご神水を飲むなんて一万年早ぇよ!」



 と言う烈王さんだが、蒸留酒をロックで飲むときの氷と水割りにする時の水はミーちゃんのミネラルウォーターを使っている。ただの水より、ミーちゃんのミネラルウォーターのほうが格別なんだって。



「ミー様、ネロ、なぜ俺は勝てない? 俺は最強の力を手に入れたはずなのに!」



 最強の力と言いますが、雷スキルは初級スキルですよ?



「み~」


「えっ!? そうなの?」


「そうなんです。ちなみにそこにいる、宗方姉弟も持っています。もちろん、俺もね」


「み~」



 そうそう、ミーちゃんもね。ミーちゃんの場合、神雷スキルだけど。


 最強と言うグラムさんの雷スキルの威力と、俺や宗方姉弟の雷スキルの威力がどう違うか見てみたいところだ。



「お互いに雷スキルを使ってみませんか? そこからなにかわかるかもしれません。烈王さん、ここでちょっと雷スキル使っていいですか?」


「いいぞ。勇者の力とやらを見てみたいしな」


「じゃあ、トシとカオリンやってみい」


「み~」



 宗方姉弟が顔を見合わせ、相談を始める。



「僕たちが考えたのは雷の攻撃というより、属性攻撃に重点をおきました」


「属性武器、浪漫だよねぇ~」



 トシが槍を構えて目の前の巨木に突きをいれる。ドーン! と音がして巨木の幹に穴が開いた。軽く突いただけのように見えたけど、凄い威力だ。


 カオリンも似たようなことができた。カオリンはそれ以外に矢が刺さった所から半径十メルほど放電が起こり、それに触れると痺れさせることができるらしい。


 見た目は地味だがなかなかのものだ。属性武器、武器に雷を付与して攻撃を行う。面白いな!


 俺も銃を構えてやってみる。最近、訓練のたまものか熟練度が上がったからなのか、スキルを二つまで同時に使えるようになった。すごく難しいけど。


 弾に雷を帯電させ、後は普通に撃つ。トシほどではないけど幹に穴が開き貫いている。凄いな、ここまで威力が上がるのか……。ホローポイント弾を使ったらゴブリンだったら粉々じゃないのか?



「勇者の力、えげつねぇな。グラム、今度はお前がやってみろ」


「み~」


「……」



 あれ? どうしたグラムさん? 顔色が悪いし、目が泳いでるぞ。


 トボトボと巨木の前行き、構えて正拳突き。パーン! と音がして表皮が弾け飛んだ……。幹自体にはさほど傷はついていないようにみえる。



「しょぼ! お前、それでヴェルに挑んだのかよ! なにが、勝つる! だよ! ウケる~」


「みぃ……」



 グラムさん、地面に沈んでいく幻が見えるくらい、心が沈んでいくのが見ていてわかる。可愛そうだが、烈王さんの言うとおりだ。あの程度で最強と言われてもねぇ。



「グラムさんは雷を見たことはありますよね?」


「ある。だが、どんなにイメージしてもあのような力は出せなかった。少しばかり攻撃の威力が上がっただけだ」


「イメージでできるようになるなら、苦労はしません。イメージでどうこうなるなら、そこら中に達人がいっぱいですよ」



 異世界ものラノベを読んでいるとよく思う。魔法などを使うのに、イメージを強く描くと最強というのがよくあるが、あまりにもナンセンセス。


 グラムさんにも言ったが、イメージでどうこうなるなら、そこら中に達人がいっぱいだ。転移や転生した者だけがイメージ力が強いなんてナンセンスすぎる。


 この世界のスキルはそんな生易しいものじゃない。修練を続け、研鑽しないとまともに使えない。詳しく知れば知るほどスキルのできることが増え、威力も増す。


 一朝一夕にイジーモードで強くなることはないのだ。たとえ、世界に影響を与えるスキルを手に入れても使いこなせなければ、ただの宝の持ち腐れ。俺の時空間スキルのように。



「トシ、カオリン。雷とはなんだ!」


「電気ですか?」


「静電気?」


「カオリンのほうが正解だな。理由は諸説あるようだけど、簡単に言えば雲の中で水分が凍り、できた氷同士がぶつかり合い静電気が起きる。それが、溜まりに溜まって限界が来た時に放電が起きる。これが雷だ」


 その静電気も正電荷、負電荷に分かれ雲の上方に正電荷、下方に負電荷が溜まっる。そして、地上の地面では正電荷が静電誘導により起こり、その間にある空気の絶縁の限界を超えると落雷が起こる。


 ここまで理解できれば、俺がよくやる悪の枢機卿の電気を飛ばす技が使えるようになる。


 だけど、これを教えるのが難しいんだよねぇ。



「み~」




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