389神猫 ミーちゃん、グラムさんの姉に会う。

 烈王さんはスミレは特別だろうと言っている。それだけの才能があり、時、出会い、助言、いろいろな要素が組み合ったからこそ神馬になれたのであって、他の者では簡単ではないと言っている。


 そう遠くないうちにスミレの種族名が変わるだろうとも言っている。


 うーん。全然安心できる言葉じゃない。うちの子たちはみんな才能があり秀でた能力も持っている。ミーちゃんと出会って仲間となる幸運も兼ね備えている。ルカたちもミーちゃんに弟妹認定されているわけだから、ミーちゃんの眷属と言ってもおかしくないだろう。


 ということは、ミーちゃんの眷属になったグラムさんは神竜にでもなるのだろうか?



「あいつか? あいつは無理だろう。ドラゴンの中でも才能ないほうだし、何より根性がない!」


「みぃ……」


「そ、そうなんだ……で、そのグラムさんはどうなっているのでしょうか?」


「み~?」



 勝つる! と言って出ていってから見ていない。



「あいつかぁ……生きているとは思うが、どうなっているか? おそらく、ボロボロだな」



 ボロボロってねぇ。体が? それとも心が? まさか、両方? 鍛えるの構いませんが、一応ミーちゃんの護衛兼俺の護衛でもあるので、その辺は考慮してくださいよ?



「まあ、あいつだから大丈夫だろう。おそらく?」


「みぃ……」



 おそらく? なにやら怪しい雲行き。大丈夫なんだろうか?



「あの馬鹿が、今度は自分からヴェルに戦いを挑んでな……まあ、いつもの姉弟きょうだい喧嘩だから大丈夫だろう。たぶん」



 ヴェルさんと言うのは烈王さんの奥さんで、グラムさんのお姉さん。クリスさんとラルくんのお母さんでもある。シュヴェルトライデさんでヴェルと、今聞いた。



「み~」



 一度、ご挨拶したいの~。って怖いもの知らずだよね。ミーちゃんって。



「あら、わたくし如きに神の眷属様がお会いになりたいなんて。隠れて覗いていた甲斐がありましたわ」



 背筋に悪寒が走る。これはヤバいやつだ。絶対に濃いキャラだ!



「この人族から良からぬ波動を感じます。始末してもよろしくて? あなた様」


「やめろ。ネロに手を出せば、眷属殿が黙ってないぞ。それにネロは俺の友人で弟子だ。勝手に殺すな」



 そうだ、勝手に殺すな! ミーちゃんが黙ってないぞ! み~って!



「みぃ……」


「あなた様にしては珍しい。人族の友人など何百年ぶりでしょう」


「あいつはいい奴だったが堅物だった。ネロはいい奴のうえ、柔軟で堅苦しくないのが気に入っている」


「み~」


「眷属殿もこう言っておられる」



 ネロくんは優しいよ~って言ってくれる。ミーちゃんの言葉に涙が出そうだよ。



「ですが、人族如きに舐められのは癪に障ります。本来の姿で威圧してもよろしい?」


「やめとけ。無駄なことだ」


「無駄……とは?」


「ネロはお前の愚弟と一度やり合っている。勝てはしなかったが、まったく気持ちは負けていなかった。どちらかといえば、困ったなくらいだった。今さらお前の真の姿を見たところでなんとも思うまい」



 うーん。怖いけど見てみたい気もする。



「なら、あなた様の威圧でわたくしの尊厳を守ってください」


「それも無理だろう。おそらく効かん。特殊な心なのか、眷属殿に守られているからかはわからんが、初めて会った時に少しばかり力を解放したが拍子抜けするほど、あっけらかんとしてたからな」


「み~」



 あの時、そんなことしてたんだ。ペロがビビってたのはそういうことだったのね。



「悔しいですわ」



 と、いうわりにヴェルさんというドラゴンさん、俺を下から上まで舐めるように観察してくる。



「まあ、座れ。こういう時は酒で仲直りだ! ネロ、あれを出せ! ケチケチするなよ。本当に消し炭にされても知らんぞ」


「み~♪」



 ぐっ……しょうがない。ミーちゃんも仲直り~♪ って言ってるしな。でも、あれを出せって、あれを飲みたいのは烈王さんじゃないの?


 仕方ない。二十年物を出すか。


 グラスにトクトクと注ぐ。烈王さんは酒豪だからツーフィンガー。ヴェルさんのことは知らないのでワンフィンガーで出す。ミーちゃんには愛用のお皿にワンフィンガー分のミネラルウォーター。



「うまい!」


「まあ!?」


「み~」



 三者三様の表現。烈王さんはこの蒸留酒を知っているので飲めて満足。ヴェルさんは少々訝しんでからの驚き。ミーちゃんは普通だね。



 烈王さんはともかく、ヴェルさんもいける口のようなので次を用意する。次は高等技術が必要だ。水がこぼれないようにお皿を用意して、ミーちゃんのミネラルウォーターを用意。ペットボトルから少しずつ皿にミネラルウォーターを注ぎ、水スキルで真球を作り凍らせる。まあ、実際は真球じゃないんだけどね。


 それをグラスに入れて蒸留酒をトクトクと注げば出来上がり。ネロ特製、神水ロック! ミーちゃんのミネラルウォーター製の氷なので、蒸留酒を飲んでも酔わない。酒飲み泣かせのお酒だ! なにせ、万能薬だから異常状態回復するからね。回復薬も兼ねてるので胃にも優しい。至れり尽くせりだ。



「こ、これは……」


「な、なんなんですの、これは!?」



 ミーちゃんはまあるい氷をペロペロ。


 そういえば、グラムさんってどうなったの?




「み~?」




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